2011年11月27日日曜日

楽譜を読む─テンポを微分してみる

前回、テンポを微分するなどという話を書きました。
そんなこと言われたって、何をしたらいいか分からない、あるいは何を意図しているか分からない、という方もいるでしょう。
ですので、今回は具体例で、私が考えるテンポの微分について紹介してみます。
難しくない話のつもりなので、ぜひ読み飛ばさないで、数字まで読んでみてください。


<テンポの例>
Bibun


ということで、まず楽譜からテンポ情報だけ抜き出してみましょう。
ある架空の楽譜から抜き出したことを想定して、上のような表を作ってみました。上の段が小節番号で、次の段にテンポの値が書いてあります。
微分する、ということは端的に言えば、前のテンポと新しいテンポの差を計算するということです。
その考えに基づき、テンポの変わり目でどれだけテンポが変わったかを示したのが3段目です。

テンポが速くなったときには正の数になります。テンポが遅くなったときには負の数になります。
変化の大きさが大きい時は、絶対値が大きくなります。
そして、実際音楽の演奏で重要なことは、まさに上の2点であると思うのです。すなわち、1.速くなるか遅くなるか、2.前からどれだけ変わるか、ということです。
テンポ値を微分することによって、この重要な値がきちんと抽出出来ることに気がつくはずです。

私の感覚で言えば、テンポの変化が10以内くらいであれば、物理的な数値の変化というより、ほとんど表現の変化の問題です。しかし差が20を超えるようになると音楽が持っている景色が変わります。
従って、このような大きなテンポの変化は、演奏者が明瞭な目標をもってその景色を変えてやらなければいけないということになります。

微分する前の絶対値は、合唱団の人数や、ホールの響き、指揮者の曲のイメージによって多少変化するのは当然です。しかし、作曲家が本当に伝えたいことは、むしろフレーズ間のテンポ相互関係なのです。ここをきっちり読み取っていかないと、作曲家の意図から離れた演奏になってしまいます。

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