2009年7月28日火曜日

「生命の進化の物語」1曲目

「生命の萌芽」と題した1曲目。意味のある詩がなく、全てオノマトペのような無意味な音節の羅列で歌われます。
ただし、内容としては、太古の海の中で多くの有機物が合成され、それらが組み合わさってついに自己複製の力を持つまでに至る、生命誕生のプロセスを表現しています。
冒頭は"混沌"を表す不気味なピアノ低音の繰り返し。そして、その上にのる旋律の断片。それらは絡み合いながら、次第に位相を合わせていきます。そのうねりが頂点に達した時、ジャズ的なビートに乗ってフーガが始まります。フーガはDNAが子々孫々と受け継がれるために自己複製している様子を模しています。その後、テンポは遅くなり、壮大な生命讃歌のモチーフへと繋がります。

全体的に、ポリフォニックな作りとなっており、純器楽的な雰囲気を持っています。全曲の中で、音楽的に最も複雑で、また密度が高いと言えるでしょう。

2009年7月22日水曜日

「生命の進化の物語」について

今回の作品は、朝日作曲賞の佳作を頂いた「E=mc2」の系譜の科学ネタ組曲。
全六曲中、1、4の2曲が無意味語によるもの。残りの曲の詩は私が書いています。
自ら詩を書く・・・というのは、イタいものが出来てしまう危険性を孕みながらも、それでも楽曲構造から全て自らの手の内にあるということが、楽曲全体の統一性やメッセージ性をより強固なものにしていくはずです。そういう意味で、コンセプトや詩も含め自分が全て構想する、というのは私にとって組曲のあり方の一つの理想型だと思っていました。

各曲名は、地球のいくつかの地質時代の名前とその副題からなります。
1.先カンブリア代 ー生命の萌芽ー
2.カンブリア紀 ーバージェス頁岩ー
3.ペルム紀 ー三葉虫の見た夢ー
4.白亜紀 ー恐竜の子守唄ー
5.第四紀 ーミトコンドリア・イヴー
6.そして、百万年後 ーノアの末裔ー

もちろん、自分で詩を書かなければこんな内容の組曲は絶対に作れません。
一見、エクセントリックな音楽だと思われることでしょう。確かに、一般的な題材とは言い難いのですが、地球の歴史に思いを馳せるとき、今生きている我々がどのような業を背負っているのか、そしてこれからどのように生きるべきなのか、やや大きなテーマですが、そんなことを問いかけてみたいと思っているのです。

2009年7月19日日曜日

東北大委嘱作品の初演

東北大学混声合唱団50周年記念演奏会で拙作の初演が行われます。ポスターはコチラ
演奏会があとひと月ほどと迫ってきました。今回は私が初演の指揮をするので、7月、8月と月二回ペースで仙台を訪問し練習をします。明日も仙台に行ってきます。

元々私の古巣からの委嘱ではありましたけれど、曲の規模や、合唱団の大きさから、ほとんど私にとって初めてというくらいの大型委嘱プロジェクトです。
今回初演するのは、「生命の進化の物語」という組曲。私にとっては久し振りのピアノ伴奏曲で、全六曲の組曲です。
せっかくですので、このブログでもこれから数回に渡って、今回初演する各曲について紹介していきたいと思います。

2009年7月14日火曜日

十人で歌うメサイア

昨日、「COMPACT MESSIAH」と題して、ムジカチェレステによるメサイアの演奏会を遠州栄光教会にて開催しました。たくさんのお客様に来て頂きました。あらためて、ご来場御礼申し上げます。

今回の演奏会の特徴は、何と言ってもあの大曲メサイアを10人で歌った、ということです。そのため、伴奏はチェンバロ一台のみ(ローランドの電子チェンバロC-30を使用)。
曲は抜粋で、全曲の約半分ほどを選び、ソロも自分たちで歌いました。

一見無謀に感じるかもしれませんが、メサイアの対位法的な楽曲は少人数アンサンブルでこそ、曲の構造が明瞭になり、また旋律の絡みが強調されるようにも感じます。
もともと、バロック時代にそれほどの大人数で歌っていたとも思えないので、巷で開催される大規模なメサイアの演奏会と違った、別の魅力を表現出来たのではないかと自負しております。
まあ、小さな(?)事故はいろいろありましたが、お客様にも楽しんで頂けたようです。自分で言うのもなんですが、今回の演奏会はなかなか面白い企画だったのではないでしょうか。

今回のチラシはこちら

2009年7月9日木曜日

iPhone、シェイクでシャッフルの功罪

近頃、iPhoneでiPodを使っているとき、勝手に「ピロピロ」と音が出て次の曲に変わってしまう現象が起き、困っていたのです。
こういったメモリにはNAND Flashが使われているはずなので、NAND Flashが壊れて読めなくなっちゃったのかなあ、とか考えたり、そう言えばOSが3.0になったので、動作が不安定になったのかと思ったりしていたのです。
何となく設定を見てみようと思って、その画面を見たら初めて思い出しました、OS 3.0からiPod機能にシェイクで曲がシャッフルすることを・・・。当然、その機能はデフォルトON。
早速オフにしてみると、予想通り全く曲は変わらなくなり、オンにしてiPhoneを振ってみると、見事に「ピロピロ」鳴った後、曲が変わるようになりました。

確かに私がiPhoneで音楽を聴くのは歩いているときです。
iPhoneからしてみれば、歩いた時の振動と、振った時の振動を加速度だけで区別することは難しいことだとは思います。しかし、デフォルトでオンだと、本当に故障したかと思ってしまいます。歩いている途中に勝手にシャッフルして、この機能のせいだと気付かなかったのは私だけでしょうか?
でもこうやって、家電は多機能化して堕落していくんだよねぇ〜。(電子製品の開発者として人様のことは言えないわけですが・・・)

2009年7月4日土曜日

三文ゴシップ/椎名林檎

Sanmon五年ほど東京事変としての活動が続いた椎名林檎が、ソロ名義のアルバムを発表。昨年の林檎博といい、ここのところの活動は激しさを増しています。そして、何といってもまるで今のJ-POPのアンチテーゼのような音楽の凝りようが素晴らしい。

このアルバムも、一言でいえば凝りまくってます。あまりに仕掛けが多くて、落ち着いて聞けないほど。
曲ごとにアレンジャーを変え、ラップ、4ビート、ラテン、テクノ、そしてオーケストラサウンドと、あまりに多種多様な音楽が詰め込まれています。
いまどきの制作費の安いJ-POPにはとても真似できない豪華さ。根本的にアルバムを作る際の金勘定の仕方が違っているのでしょう。まず良い音楽ありき、で、必ず売り上げは付いてくる、という自信が無ければ、こんなアルバム作れません。
個人的には、やや変拍子っぽく聞こえるオーケストラ曲「都合のいい身体」がヒット。プログレ好きの私としては、こういうリズムや和音が凝った音楽が好きなんですね。

よくよく読むと、詩も大変面白い。これもJ-POPのアンチテーゼを狙っている感じ。恋愛を歌った曲も随分少ないし。上っ面の音楽かくあるべし、のような感覚を、どうやって覆そうか、いつも彼女はその微妙なラインを狙ってきます。
椎名林檎が、今の日本でクリエータ魂を刺激する稀有なアーティストであることは間違いありません。