2009年9月17日木曜日

オーディオというオカルトープラシーボ効果

プラシーボ効果という言葉をご存じでしょうか。
検索してみると、医学関係の記事にヒットします。偽薬効果とも書いてあったりしますが、要するに「これは身体に効きますよ」といって、全く効果の無い薬を処方しても、思い込みで治癒してしまうような現象のことです。まあ、それほど人間の思い込みは強い、ということでもあります。
プラシーボ効果をオーディオという文脈の中で使う場合、逆に悪い印象を表現することが多いように思います。つまり、オーディオ機器の設定を全く何も変えていないのに、「音が良くなるように設定変更しました」と言った後に音を聞かせると、音が良くなったように感じるというような現象です。

これは「○○を変えました」という明確な内容で無くても、周囲で音評価のプロと呼ばれている人が発した言葉とか、世間的に評判の高い評論家の言葉とか、そういう人々の意見に自分の思考が大きく影響させられる状況にも当てはまります。
これは過去に何回か、権威主義的な態度ということで私も話題にしたことがあります。

まあ、グルメの話題とか、日常のたわいのない会話レベルでは、気にするほどのこともありませんが、実際に良い音を求めることを生業としている人にとっては切実な話です。
そしてたちが悪いのは、多くの人が周りの意見に惑わされず、自分の意志できちんと判断しているという根拠の無い自信を持っているということ。しかし私のみるところ、自分も含めプラシーボ効果と無縁で判断するなどというのはあり得ないように思えます。

では、プラシーボ効果を完全に排除するにはどうしたら良いのか?
それはブラインドテストを行うということに尽きます。事前に何の情報を与えずに音を聞かせ、どっちが良いかを問うわけです。オーディオの世界では、ABXテストという手法がよく使われます。
ブラインドテストというと、評価者は自分の感覚を疑われたような気分になるのですが、それに理解を得られるような人でなければ、本来音の評価などやってはいけないのではないでしょうか。
とはいえ、なかなか人間関係の中で、そこまで人を疑うようなやり方をいつも出来ないというのが現実ではあるのですが。

2 件のコメント:

  1. ずいぶん昔(70年代かな)の話ですが、五味康祐という剣豪小説の大家でオーディオ評論家としても著名だった人がいました。もう読まれることは少ないと思いますが、個人的には柳生の里から代々の剣術使いが上京して、なぜか巨人に代打専門のバッターとして入団して大活躍、という「一刀斎は背番号6」というのがふざけてて(よい意味)印象的でした。
    オーディオ評論家としての嚆矢の一人と言っていいこの人は、実は戦時中に手榴弾が近くでなったとかで、難聴だったそうです。そもそも若いころから高い音は聞こえず、晩年は補聴器が必要だったそうですが、それでもオーディオ評論の仕事は続けていたそうです。
    いや、そういう耳でも音のよさが分かる、という可能性は否定しませんが、でもどうなんてしょうね(^_^;)

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  2. 慎一郎さん、ども
    五味康祐という方、残念ながら知りませんが・・・なんか、怪しさ全開という感じですねぇ。
    しかし、そういう世界があるということを開拓したという意味では先見の明があったのかもしれません。ライバルがいなければ耳の良さも必要ないし。

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