2011年1月2日日曜日

ノルウェイの森

なぜか毎年正月の一日に妻と二人で映画を観ます。
昨年は子供が生まれて初めての正月でしたが、子供を実家に置き去りにし「のだめ」を観に行きました。そして、今年も同じく二人で観に行ったのが、村上春樹原作の映画化「ノルウェイの森」です。

ちなみに原作未読。村上春樹は、ここのところの数作しか読んでない程度ですが、一応こんな作家というのは分かった気にはなってます。そういう意味では、全く予想を裏切らない村上春樹テイスト。これを撮った映画監督もスゴい。自分自身の芸術観をたっぷり映像で表現しながら、しっかり村上春樹的世界を表現していたと思います。
全体的な雰囲気を言えば、良質なヨーロッパ映画のようなカットと、アジア的な美観を持った映像の美しさが重なり合った静謐な映画。これに村上春樹的な虚無感、エッチ感、いけ好かない感がうまくブレンドされています。

辺り一面の寂寥とした野原、あるいは雪景色が、ワタナベと直子の恋愛が持つ、どうしようもない哀しさをうまく象徴しています。都会的な雰囲気と、直子のいる世界を映像的に明瞭に描き分けているかのよう。自然そのものが直子の心の有り様を示していると言えるかもしれません。
ただ、個人的にはややその映像美が、やや古くさい芸術観のような気もしました。バックで流れる現代音楽も自分としては古めかしい感じ。数十年前の映画のような・・・

世代としての面白さってのもあるんでしょうね。舞台となる1968年の大学って、私の時代よりさらに20年前。学生紛争の時代。今と全然違う。無駄に熱い学生の中で、虚無感を漂わせるワタナベの存在というのは、昔の感覚ならキザでクールって感じだけど、今のようにみんなが虚無感を漂わせている時代、というのはそれはそれで辛い世の中。そんなことも感じてしまったのです。

さりげなく出ている糸井重里、細野春臣、高橋幸宏を発見するのもなかなか楽しい。こんな静謐な映画の中でちょっとだけ笑ってしまいますね。
それにしても、ワタナベ君、もてすぎですよ。村上春樹的世界なので仕方ないけど、全然村上春樹を知らない男性がこの映画見たら、7割くらいは反感持つでしょうね。これをフィクションだと思うところから、初めて主人公への感情移入が可能となるのです。
若い方は間違ってもワタナベ君を目指すのは止めた方が良いです。この物語の中から自分が共感する美観だけを追いかければ良いのです。

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