2010年6月17日木曜日

27.音の聞こえる方向

巷では3Dが流行っています。専用メガネをかけると画像が浮いてくるというアレ。3Dの映画では臨場感溢れる映像を楽しむことが出来ます。
ところが、オーディオの世界では、すでに3Dは達成されていたのです。音における3Dのことを、ステレオと言います。
ステレオスピーカーで聴くと、音に広がりが生まれ、それが音の良さを感じさせるのです。

二つの目が映像に遠近感を与えるのと同様、二つの耳によって人間は音の遠近感や、音が来る方向を感じることが出来ます。
では、人間はどうやって二つの耳で音の来る方向を感じているのでしょうか。
実際には、たった一つの要因ではなく、これまで書いてきた音の性質を総合的に分析して方向を判断しています。
まず一つ目に、音には速さがありますから、左右の耳に届く音の時間もほんのわずかに違います。時間差は少なすぎますが、二つの音はわずかに波形がずれていて、そのズレが方向性を感じさせるとも言われています。
次に、当然音に近い耳の方が、音が大きく聞こえます。音源が近ければ音量でも判断できるでしょう。
さらに、音は回り込む際に高周波成分が失われます。音の聞こえる方向に近い耳と、そうでない方の耳で、やや聞こえる音の周波数成分が異なります。これによっても音の方向性が知覚できるようです。
さらに、もう一つ言うと、人間は常にかっちりと頭の位置を固定しているわけではありません。むしろ落ち着き無く、いろいろな方向を向いたりするものです。どこからか音が聞こえたときはなおさらです。そんなとき頭の位置を変えれば、音の聞こえ方も変わります。頭を固定している時に比べれば、頭を動かせば、音の方向性を判断するための多くの情報が得られるはずです。
人はそうやって、落ち着き無くきょろきょろと頭を動かすことによって、音が来る方向を察知しているのではないでしょうか。もちろん、これはすべて無意識に行われており、総合して判断した音の方向だけが人の意識に上ります。

音が聞こえる方向を音楽制作時に意図的に制御することをパンニングと呼びます。方向そのものはパン、あるいは音の定位とも言います。現在では、パンの操作も音楽作りの重要な要素の一つとなっています。
様々な方向から音が聞こえてくれば、音響は立体的になり、それ自体が何らかの意味を帯びてくるからです。

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