2011年4月19日火曜日

震災犠牲者に捧げる合唱曲作曲

以前お知らせしたように、久しぶりに混声の合唱組曲を作曲しています。
全3曲を予定しており、1曲目を作曲したところで、【初演団体募集】と宣伝を始めましたが、残念ながら今のところまだ引き合いはございません。

震災はその1曲目を書いてしばらくしたときに起きました。
幸いにして私の周辺には何の被害は無かったものの、連日の被災地や原発の報道で、日本を取り巻く状況が一変してしまいました。そういう意味では、どこに住んでいるかに関わらず、今回の震災が私たちに大きなインパクトを与えたのは確かなことです。
涙無しには見れない映像や、読むことも辛くなるような記事も目にしました。
そして、その中で私の心に生じた何かを、音楽として表現するべきだと思い続けていました。

今作曲中の合唱曲の2曲目は、「神」を題材にしたテキストです。
17世紀の物理理論書であっても、当時は何事も神無しには語れなかった時代です。宇宙がどのように出来ているのか、それと神はどのような関係にあるのか、そのようなことが綿々と綴られたテキストから、いくつかの文章を選んでいます。
大意はこんな感じです。「神はいつもどこでも唯一である。人の身体のような形がないので、見ることも聞くことも触ることも、そして拝むことも出来ない。私たちにはその観念は理解できても、その実体が何なのかはわからない
このテキストは犠牲者への追悼の言葉としては、あまり適当ではないのかもしれません。しかし、途方もないものに遭遇して、その非情さに神を感じることもあるのではないでしょうか。とてつもなく悲しいことがあったとき、人々が欲するものは"諦める理由"なのかもしれないと思います。神の非情な仕業であることを確認することもまた、犠牲者の弔いになり得るのではと考えました。

いずれにしろ、これは「頑張ろう、日本!」というような前向きなスローガンとは全く別の心象による曲です。私自身の内的な無常観を表現したものです。
何はともあれ、この曲を震災犠牲者に捧げようと思います。
楽譜をこのページに置きました。新曲Pの2曲目が今回作曲した曲です。

曲は主題の提示の後、ルネサンスポリフォニー的な形で始まります。ポリフォニーの中から、二声による力強い旋律が現れた後、耳に馴染む感傷的なメロディが繰り返し歌われます。盛り上がりの頂点で主題が再び現れ、もう一度音楽は落ち着き、最後にアーメンによって終止します。

もともと組曲として構想しているので全3曲完成ののち、全曲初演してもらうのが筋ではあるのですが、この2曲目だけ取り上げ、弔いの場で演奏して頂くことも全く構いません。どのような形であれ、引き続き初演して頂ける団体を募集しております。
まずは楽譜をご覧になり、MIDIで音を確かめてみて下さい。私なりに震災に向き合ったその想いが伝わると幸いです。

0 件のコメント:

コメントを投稿