2012年5月6日日曜日

テルマエ・ロマエ

ネタの面白さにつられ、話題の映画テルマエ・ロマエを観に行きました。
ローマの浴場設計技師だったルシウスが現代日本にタイムスリップし、そこで得た知識を元にローマで斬新なお風呂を作っていき、それが評判になります。その後ルシウスは次期ローマ皇帝の争いに巻き込まれて・・・といったストーリー。原作は同名のマンガですが、私は読んだことはありません。

何といっても、「お風呂」というテーマで古代ローマの風呂の設計技師が日本にタイムスリップしてしまう、という設定が秀逸。いちいち日本のお風呂に感動する設計技師ルシウス、というのがこの話の面白さの基本にあります。

元々日本人は温泉好きだし、お風呂に対するこだわりというのも恐らく世界では類を見ないのでしょう。同じように公衆浴場が人々の暮らしに浸透していたローマ時代と無理矢理繋げてしまうことが、これほどの喜劇性を持ち得るというのは新鮮な驚き。
また、恐らく原作のアイデアだと思うのだけど、日本で一般的なお風呂グッズに一つ一つ驚きの声を上げるルシウス、というのは日本人の自負心をくすぐると同時に、日常のたわいもないことに感動することがなかなか面白おかしいことだと気付かされます。

また、このおかしさは主人公阿部寛の演技によるところが大きいです。
この人は、硬派なドラマでカッコいい役もいろいろやっているのに、なぜかこういう喜劇でとてつもない存在感を示してくれるのですが(前笑ったのはこの映画)、正直個人的にはやや残念なイメージ。ちょっと俳優としての品格を保つべきでは、と他人事ながら心配してしまいます。
今回はストーリー上、裸のシーンが多く、どちらかというと下品になりかねない男の全裸を、笑いに使われている感じがしました。

ローマ時代の映像なども決して手抜きをしておらず、全体的には非常に楽しめる映画にはなっていました。恐らく今年の邦画で最も興行収入があるのではないかと今から想像出来ます。
しかし、その一方フジテレビ映画的な低俗さを感じたのも事実。
内容より仕草で笑わせるやり方、狂言回し的な無駄にひょうきんな脇役の作り方、ストーリーの一貫性の無さ、わざと映像をチープにする可笑しさの多用(こういう笑いは映像制作として逃げではないかと思う)、意味が分からないシーンの挿入(山の中で歌うオペラ歌手)など、これまでの日本映画で私が疑問を感じるような場面にいくつか出くわします。

この映画はイタリアでもウケた、との評判ですが、上記のような場面をもっと洗練させ上質な映画作りにすればもっともっと世界的にも評判になる映画になるだけの可能性を秘めていたような気もします。
とはいえ、こういう笑わせ方が日本人のツボにハマる部分もあり、ビジネスとして考えた場合仕方が無い(というか、よく心得ている)と言うべきなのかもしれません。

本作ではイタリアオペラを中心にたくさんのクラシック音楽が流れます。フォーレのラシーヌ讃歌はローマとはどう考えても関連性が無く、なぜこの曲をバックミュージックに使ったのか、ついつい考えてしまいました。

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