2010年11月21日日曜日

未来型サバイバル音楽論/津田大介+牧村憲一

Twitter伝道者である津田大介と80年代、90年代の音楽界仕掛け人?である牧村憲一の対談による日本の音楽業界論。
ここで述べられていることは、こういうことに興味ある人ならたいていは知っている内容なのですが、それがとてもシンプルに整理されていて、ここ十年くらいの音楽を取り巻く状況が俯瞰できるのが本書の嬉しいところ。また、実際に新しい取り組みをしているレーベルやアーティストの実例がたくさん挙げられているのも、大変興味深く読めます。

もちろん本書の中身は純粋な音楽論ではありません。音楽ビジネス論です。
しかし、芸術の有り様というのは「お金」の話抜きに語れないと、最近私は思っているし、だからこそ、音楽家、芸術家がもっとビジネス的な視点で自らの芸術家活動を行うべきなのです。
そして、本書もこれからのミュージシャンにそういう事業家としての視点が必要であることを説いています。

牧村氏からは「一人1レーベル」とか「村作りの発想」というアイデアが出されます。ネットで広く発信できる現在だからこそ、逆説的なのですが、閉鎖的なコミュニティを指向した方がむしろこれからは有利なのでは、とのこと。
これは大変、示唆に富んだ話です。グローバル化して市場がとてつもなく広くなったからこそ、方向性や嗜好が狭くなってもビジネスが成り立つということ。逆に広く売れようと思うと無個性的になり、芸術そのものの力が無くなってしまう、というような状況を言っているのだと思います。

この本を読んで思ったのは、今は大変な変革時期だというのは確かなのだけど、そもそも音楽業界自体が十年単位くらいでその有り様を変えていたのだと言うこと。
特に70年代、80年代までは、音楽の再生装置(オーディオ機器)がまだ高価な時代で、レコードを買って音楽を鑑賞すること自体が贅沢な趣味だったのは、思わず忘れかけていた事実。そんな時代と90年代以降の市場性は違って当然でしょう。
思い起こせば、私が高校生の頃、親に「ステレオ買って〜」とねだって20万もするようなセットを買ってもらったっけ。でも、レコードなんて全然買わずにレンタルばかりでした・・・
そして、90年代はCDがとてつもなく売れた時代。そして自分自身もCDを買いまくっていた時代です。そう考えると、音楽ビジネスってそもそも全然安定して無くて、10年単位くらいで常識が変わってるんですね。だからCDが売れなくなった、なんてほんとは大した話ではないのかも、という気がしてきました。

まあ、いずれにしても、音楽を作ったり流通したりする手間が極限まで下がったおかげで、アーティストが自分の力だけで世界に発信することが可能になっています。こういった時代に、新たに生まれるべき音楽ビジネス、あるいはビジネススキルとは何なのか、そういうことがしばらく暗中模索されるような時代になったと言えそうです。
そんな時代にちょっとばかり自分もプレーヤとして参加してみたくなってしまいました。

0 件のコメント:

コメントを投稿