2010年1月17日日曜日

1Q84/村上春樹

1q84言うまでもなく、昨年の文芸ベストセラーだった作品。しかし、日本広しといえども私のようにBook2だけ買ったという人は少ないかもしれません。(逆は多そうですが)
というのも、正月に実家に帰省したとき、なぜか本棚に「1Q84」のBook1が飾ってあったのです。母から話を聞けば、例のエルサレム賞のときのスピーチが印象にあったので買ってみたとのこと。ところが、本を買った母は1章くらいしか読めていないみたい。
たまたま、家で拾い読みしていたら結構面白かったので、実家にあったBook1を奪ってきたというわけです。
まあ、日本全国には私の母のように、買ってはみたけれどぜんぜん読めていない人って結構いそうですね。仮にウチの母がもうちょっと読めていたとしても、次の次の章で青豆が殺し屋であることが分かった時点で卒倒しそうだし、あまりに頻繁に登場するセックスシーンにきっと本を投げつけていたことでしょう。

まあ、そんなわけで、もともと自分の意思で本を買って読むつもりはなかったものの、ついつい読み始めることになりました。結局勢いでBook2は自分で買って、最後まで読むことになってしまいました。
といいつつ、今頃情報を集めてみると、近いうちにBook3が出るそうな。うーん、それを知っていたらこの本に手を出さなかったかも。確かにBook2で終わると、やや回収されない事柄が多すぎる気はしたけれど、村上春樹ならそういうこともあるのだろうと勝手に思っていました。

以前、「海辺のカフカ」を読んで以来、二度目の春樹体験。
相変わらずの春樹調に苦笑しながらも、ストーリーが大変面白くて、ページをめくる手が止まりませんでした。Book2の中盤くらいまではエンタメといってもいいくらい、サスペンスちっくだし、怪しい人がたくさん登場してきて、次はどうなるんだろう、という楽しみで読めました。
実は途中まで、きっと主人公は二人とも山梨の教団に乗り込んで、そこで派手に暴れまわるようなそんな展開を期待していたのですが、やはりそこまでエンタメ的ストーリー展開にはしなかったようです。となると、ややカルトの扱いが中途半端な気がして、本当にカルトのことを書きたかったのか、ちょっと疑問を感じます。

私的にどうしても気になるのは、主人公たちのクールでタフな人格。これだけ音楽、文学、映画などに精通しているインテリが、スポーツインストラクターだったり塾の講師だったり、どちらかというと社会を動かすような立場にいない職業である点とか、それでいて、ただの頭でっかちでなくてマッチョな肉体志向だったりとか、モノに執着しない点とか、料理が好きだったりとか・・・要するに、村上春樹的理想人間の設定がどうしても鼻についてしまうわけです。
社会の醜悪さに対して、いつも傍観者的なシニカルさでしか対応しないずるさ、とでもいうか。実際、そうでもないと今の世の中生きていけない、というのは確かで、それゆえに村上春樹が評価されている気もするけれど、そこにはどうしても職業人として何かをやり遂げようとする気迫が希薄な感じがしてしまうのです(思わずダジャレ)。


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