2008年8月11日月曜日

スティーブ・ジョブズ 神の交渉力

JobsAppleのCEOであるスティーブジョブズの生き様を紹介した本。いちおう、ビジネス書とか、リーダー論的な論旨にはなっているものの、あまりのジョブズの性格の無茶苦茶ぶりに、どう書いても彼個人の奇行歴にしかなっていません。
これまで、Apple製品の洗練されたセンスにはスティーブジョブズの大きな影響があると書きました
そもそも、Appleなどという大企業において、CEOとはいえたった一個人の影響力がそこまで商品の隅々まで及ぶのか、という疑問を持つ人もいると思います。もちろん、普通の人間だったらそれは無理でしょう。世のたいていの会社は、社長が変わったくらいで、製品の洗練度が変わるなんてことは無いのです。
しかし、スティーブジョブズならそれが可能なのです。それはこの本を読んで痛いほどわかってきます。

正直、一消費者としてはApple製品の洗練度に感銘することはあっても、ジョブズを個人崇拝の対象にするにはためらわれます。
あまりに、人間として酷すぎます。何が酷いかは、本を読めばわかるけれど、しかしだからこそ、多くの才能ある人間を従えてあれほどの製品群を作れるのだということがわかるのです。彼らも、どんなに無理な要求でも、ジョブズの元にいるからこそ、世界を動かす仕事ができる、という気持ちがあるからこそやっていけるのでしょう。
作曲家で言えばワーグナーみたいな人なのかなあ、と思ったりします。借金を踏み倒したり、人の奥さんを横取りしたりする一方、自分の曲を演奏するための劇場を作らせるほどの辣腕ぶり。ワーグナー好き、いわゆるワグネリアンは、こういった行動力に憧れている人も多いのではないでしょうか。

これを読んで、スティーブジョブズは絶対日本には現れないだろうなあと感じました。
このような個人がプロジェクトを率いればみんな造反するだろうし、上のほうも難癖をつけて重要な仕事をさせないでしょう。だいたい、日本では苛烈な独裁者はたいてい暗殺されてしまうのです(織田信長とか、井伊直弼とか)。

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