2007年7月8日日曜日

安徳天皇漂海記/宇月原晴明

Antok一言でいえば、史実を元にした壮大な歴史ファンタジーって感じでしょうか。
ちなみに、題名が類似している澁澤龍彦「高丘親王航海記」ですが、やはりこの小説が書かれるきっかけになっており、この作者のリスペクトの対象となっているようです。何といってもこの小説のラストに、「高丘親王」も登場してしまいます。まるで、「高丘親王航海記」の続編のように・・・

さて、この小説、安徳天皇が題になっているけれど、肝心の安徳天皇は琥珀の中で眠ったままという設定。この安徳天皇が眠る琥珀の玉をめぐって、様々な人物が登場します。
第一部は、源実朝編。源実朝のお伴をしていた近習の想い出語り、というスタイルで文章は紡がれます。壇ノ浦の海に散った安徳天皇は実は琥珀の玉の中で眠ったまま生きている、という設定。この琥珀の玉を、源実朝が保護していこうとする様を描きます。しかし、史実どおり、実朝は甥の公暁に暗殺され、琥珀の玉は遠く中国に運ばれるところで一部が終わります。
第二部は、マルコ・ポーロ編。今度はマルコの視点から描かれ、三人称スタイルに文体が変わります。元のクビライ・カーンに仕えて面白い話を聞かせる務めを負っているマルコ・ポーロ。そのマルコが、不思議な琥珀の玉の話を聞き、それを確かめるため元に最後の抵抗をしている南宋に赴きます。そこでは、南宋の幼皇帝が琥珀の安徳天皇と夢の中で交流しているのでした。しかしその皇帝も、安徳天皇よろしく、元の水軍の前で入水することになります。・・・そらに琥珀の玉の行方を追って、マルコはラストの不可思議で壮大なシーンを体験するのです。

歴史上の有名人物が、安徳天皇の琥珀の玉をめぐって、様々に思案し、行動していく様子がとても面白い。そういえば、ちょっと前の大河ドラマ「時宗」を思い出しました。あのときも、マルコ・ポーロが出てきましたし。
個人的には古文がちょっと苦手なんですが、特に第一部、「吾妻鏡」や「金塊和歌集」が、何の解説もなく引用されているのは、正直読むのがしんどかったです。
ただ、そういう非常に手の込んだ小説世界が本当に素晴らしくて、この伝奇的なファンタジーのとりこになったのは確かです。

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