2006年3月9日木曜日

電子楽器の限界

今日、とある演奏会を聴きに行ったのですが、その中で電子オルガンを使ったステージがありました。
あんまり、電子オルガンのソロでクラシック的な演奏を聴いたことがなかったので、久しぶりに嬉しい体験でした。

基本的には、このステージではオーケストラ音楽を志向していて、オルガン一台でオーケストラのような音色を出そうとしています。演奏者もその音色でリアリティのある表現となるよう、うまく演奏していたと思います。電子オルガンもタッチやエクスプレッションペダルで、かなりきめ細かな表現が出来るのですね。
しかし、それでもその音が本物のオーケストラ楽器に聞こえないのは、音が悪いわけではなくて(だいたい本物の音をサンプリングしているわけですから)、もっと別の理由にあるような気がしたのです。

それは端的に言うとダイナミックレンジではないかと思うのです。
電気を使った場合、必ず電気回路によってダイナミックレンジが規定されてしまいます。デジタルになると、デジタル信号が何bitかで、ダイナミックレンジが決まってしまいます。音が小さいほどSNが悪くなるので、デジタルの場合、なるべく高いレベルで出力したくなります。
しかし、自然の音って、そうじゃないんですよね。静寂はどこまでも静かだし、どんな弱音もホワイトノイズに埋もれるなんてことはあり得ない。強音は、人間の耳が壊れるまで、いくらでも大きくできます。要するに自然楽器の音は、スピーカで出す音楽では到底かなわないくらいのダイナミックレンジを持っているんです。
だからこそ、生楽器では音の質感がぜんぜん変わってきます。サンプリングされた音は、どこかで表現のレンジも圧縮されてしまっているのです。もしかしたら、そのあたりが電子楽器の一つの大きな限界なのでは、とちょっと思ったのです。

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