2005年1月16日日曜日

第四間氷期/安部公房

4thK自分では好きな作家だと思いながら意外と読んでないのがこの安部公房。何といっても「砂の女」の面白さが圧巻なわけですが、じゃ他の本はどんな内容だったかというとなかなか思い出せなかったりします。
そんなわけで、久しぶりに安部公房の長編を読みました。小説自体が書かれたのは昭和33年という、はるか昔のこと。この小説、いわばSF小説なのですが、たしかに昔に書かれただけのことはあってSF的要素は古色蒼然という感もあるのだけれど、小説自体が訴えたいことは時代を超えても全く色褪せていないのです。「砂の女」もそうなのですが、あり得ない状況、信じられないような状況をSF的設定で作って、その中で、一体自分とは何者なのか、ということを主人公を通して語るというのが、安部公房の基本的なスタンスのように見えます。
この小説の場合、主人公は「予言機械」の設計者という設定。ある殺人事件などに巻き込まれていくうちに、一緒に開発している部下の言動に疑いを持ち始めます。話の途中までは、そういった謎がどんどん膨れ上がっていきます。しかし、広がり始めた話はむしろ主人公自身の話に収斂するようにどんどん狭まっていき、ついに自分自身を陥れていた張本人として、予言機械内に生成された主人公の第二次予言値(主人公の別人格のようなもの)が現れるにいたって、加速度的に謎が解かれます。そして、全てを知った主人公が殺される寸前で話は突然終わるのです。
安部公房にとってのSFとは単に未来を描きたいというより、主人公をシュールな状況に追い詰めるための道具なのだと思えます。そして、その中で、世界の中でまるで自分ひとりが孤立しているような不安、を執拗に表現しているように感じます。

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