2011年12月10日土曜日

音楽の形式

音楽形式などというと、教科書的で堅苦しい感じがあります。
でも、そんなにアカデミックなアプローチをするまでもなく、どんな音楽にも構造が必要であり、そのために何らかの形式は持たざるを得ないのです。
音楽好きの間でさえ、実際のところ、音楽形式について興味を持つ人は多くありません。普通はどうしてもメロディがきれいとか、音色が気持ちいいとか、和音の展開が良いとか、その瞬間の音楽の善し悪しに注目してしまうものです。
しかし、思っている以上に楽曲形式は聴く人に大きな影響を与えていると思います。音楽の作り手が巧妙に形式を使って仕掛けているからこそ、その音楽の魅力が高まっているという側面もあるのです。

「音楽の形式」とは、ものすごく単純に言ってしまえば、メロディの繰り返しがどう作られているか、ということです。
音楽が始まってから終わるまで、全く一つとして同じメロディが現れない、ということは通常考えられません。どんな音楽でも、1曲内に同じメロディを持った箇所があるはずです。そうでないと、一度聴いてもメロディを覚えるのが困難になり、非常に聴きづらいという印象を与えるはずです。
楽曲分析というと、ミクロで局部的な方向に行きがちですが、ある音楽の魅力を調べるには、その音楽の楽曲構造も調べるべきです。それによってある主題がどのように繰り返されているか理解するようになり、それがその楽曲の魅力の一つに見えてくるのです。

繰り返しに注目して構造を解析していくと、音楽の流れに物語が生まれます。その物語の流れを作るということも重要な創作の一部です。そこで、音楽の教科書的な形式の話から離れて、私なりに曲の構造をパターン化してみました。
・「反復型」
小さな固まりが何度も繰り返される構造です。
いわゆる有節歌曲的な構造。これは通常、歌のある音楽に使われ、物語は音楽よりも歌詞のほうに委ねられます。繰り返しというからは、最低2回は必要ですが、近年のポップスはほとんど2回ですね。

・「変化する反復型」
小さな固まりが繰り返されるのですが、繰り返される度に変形が加えられます。
一般的には変奏曲形式ということになるのでしょう。同じものが変形していく様は、何かしらの成長や、あるものの歴史とか、そういう物語を付与することが可能です。

・「主題繰り返し型」
ロンド形式とか書いたほうが分かり易いのでしょうが、教科書的な言葉を使うと何やら厳格なイメージがしてしまいます。
これはある特定の主題が、思い出したように何回か現れるようなパターンです。
明確な形式感が無ければ、ほとんどの芸術作品はこんな感じの構成に分類されるでしょう。これが一般的なのは、ある程度曲の規模感を出しつつ、その曲の統一感を保つことが出来るからでしょう。
主題が出てくる度に聴衆はほっとするわけですから、この主題に何らかの意味を付加することによって、曲が物語性を帯びてきます。

・「複数の主題繰り返し型」
繰り返される主題が複数あると、曲の構造はとたんに規律を重んじるようになっていきます。
一番良い例はソナタ形式でしょう。ソナタ形式では、曲全体が提示部、展開部、再現部となっており、各所に二つの主題が配置されます。再現部の第二主題の調性が主調になるとか、古典の世界ではそれなりにルールがあります。
このような音楽の場合、曲の構造自体が作曲者の大きな関心となり、そこに積極的な意味が込められるようになっていきます。行き当たりばったりでは複数主題を扱う音楽を作曲するのは難しくなるからです。

繰り返しがどのように構成されているか、こういう観点で楽曲を眺めるといろいろ重要な発見があるはずです。

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