2008年12月13日土曜日

楽譜を読む

当たり前だけど、演奏するためには、まず楽譜を読まねばなりません。そして、楽譜に書いてあることを咀嚼して、解釈する必要があります。それに演奏者自身のフレーバーを加えて自分たちのオリジナルの演奏にしていくわけです。
危険なのは、フレーバーを加えることばかりに注力するあまり、楽譜の解釈を十分にしないことです。それは曲を作った際の意図を歪めてしまうことになり、結果的には曲の良さが伝わらない独りよがりの演奏になる危険性があります。
では、どのように解釈するべきなのか?まずはテンポ指定を例に考えてみましょう。

最近のほぼ全ての曲にはテンポはメトロノーム指定があります。
これは完璧な絶対量なので、間違えることの無い明確な指標ではありますが、そもそも生演奏において、厳格に完全にテンポの揺れなく演奏することは不可能です。しかも、編成や演奏場所などにおいても容易にテンポは変化します。
しかし、だからといってテンポ指定は無視していいわけでは無いでしょう。
この時の視点として、まあ絶対指定の±10%くらいのブレはいいじゃない、とかそういう考えもありますが、個人的にはあまり感心出来ません。それは結局、テンポ指定の絶対性に依存しているからです。ブレの許容範囲値自体も、視点を変えれば絶対量と言えてしまいます。
そもそも、生演奏のテンポ設定に絶対量などあり得ない、というのが私の考えです。

大事なのは、そのテンポ指定の本質的な意味を考えて、曲全体で伝えようとしているイメージとテンポ指定をリンクさせること。それから、曲の流れの中でのアゴーギクを捉え、テンポの変化を相対的に捉えることだと思います。
最初の点は、このテンポでこの曲を歌ったら、こんな風なフレージングにならざるを得ない、というポイントを探すということを意味します。テンポによってメロディの流れ方も変わるし、息継ぎのタイミングも変わるはず。その表現はキープするべきなのです。逆に考えれば、その曲のイメージを損なわない範囲なら多少テンポを変えてもいいということになります。
次の相対的に捉えるという点。例えば、テンポ=96が、テンポ=88に変わったとします。これはテンポを遅くしたいという作曲家の意思が込められていると解釈できます。ですから、絶対的な数字を守ることよりも、その時点でテンポ感が変わったと感じるように明示的に演奏するべきでしょう。

演奏時の状況の違いで楽譜通りの絶対的テンポを守らなくても、上記の点をしっかり解釈して演奏するなら、作曲家が描いたテンポ設定からそれほど遠ざかることは無いはずです。
テンポに限らず、キーワードになるのは、なぜそのような指示をしているかの本質を考えること、それから曲の他の部分との相対的な関係を調べること、ということが曲の解釈には必要なことだと私は考えます。

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