2007年1月7日日曜日

僕僕先生/仁木英之

Bokuboku第18回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品。
帯にも書いてある通り、古き中国を舞台に、金持ちの息子であるニート青年が、美少女仙人と不思議な旅をする、というお話。
こういった大まかな設定だけ見ると、ラノベっぽく見えるけど、読んでみるとかなり本格派。中国史に生半可でない薀蓄が述べられるなど、いわゆるファンタジー小説での博学傾向をしっかり持っていて、ストーリー全体に重厚な響きを与えています。文章は決して固くは無いのだけど、歴史小説を読むような格調の高さがあります。

そういった中で、気弱なニート青年が仙人である少女に少しずつ恋心を覚えるようになる、というのがこの物語の大きな流れ。少女が圧倒的な力を持つ仙人であるにも関わらず、少女のようなしおらしい態度を取るようになっていく辺りに微妙な味わいがあります。
何でも出来てしまうスーパーマン的な力を持っている仙人が、人間的な世知辛い事情でやはり行動しなければならないナンセンスさもちょっと笑えます。

ただ、仙人は状況に応じていろいろな姿に形を変えられるのですが(老人にも変身するし)、少女であることもその一変形に過ぎないわけで、それだけでこの仙人を本当に少女だと感じる気持ちが萎えてしまったのも事実。そう思うと、若干後半の流れに無理があるようにも感じました。
全体的には渋澤龍彦の「高丘親王航海記」のような雰囲気があって、なかなか楽しめました。

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