2005年7月6日水曜日

芸術家論 その2

前回言った二つのベクトルをもっと分かりやすい言葉にするなら、「技術力」と「独創性」ということになるでしょうか。むろん、こういった価値基準の提案は、単に話を明快にするためのもので、現実にはそんな単純に物事を分析することは難しいことです。なので、あくまで抽象的な想念上の概念だと思ってください。

ちなみに今日、私が何を言いたいかというと、創作家の本当の価値は、一般大衆が判断するには難しく、専門家の長い間の評価の蓄積があってようやく定まるものであり、流行り廃りで音楽、芸術を消費する今の時代は、創作家の真の価値が理解されるのに、かなり危険な状況であると感じるのです。
情報があっという間に伝わる今の時代、「売れる」ものがあれば人々はすぐに飛び付きます。消費者だけじゃありません。「売れる」もの周辺からさらに新しいビジネスを狙っている人もたくさんいるのです。そんな時代、大衆が火をつけたひとときの流行りで、とたんにあるモノが売れてしまう、という現象が最近多いように思います。これは、音楽でも同じ、クラシックや合唱というマイナーなジャンルでさえ、その傾向があります。後で思うと、なぜみんなこれほど同じ曲を歌ったのか、不思議に感じるほどです。

このように情報が早い時代に、的確に創作家の価値が評価されるためには、結局、我々大衆が、消費者が十分な審美眼を持つ必要があります。そうでないと、能力のある創作家が報われないことになります。
創作物を享受する人たちは、少しでもどんな「技術力」があって、どのような部分に「独創性」を感じるのか、的確に判断する眼を持つことが大事なのです。そして、そういう意見交換がもっと活発になれば、また面白いことになるなあと感じます。

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