「のだめカンタービレ」を観てきました。
何度も書いていますが、バカバカしいけど良くできてます。原作が良いのだと思います。揺れる乙女心の理不尽さなどは、なかなか凡百のトレンディ系映画には作れない流れだなと感じました。
しかし何と言っても、この映画の面白さは、シビアな音楽芸術の探求の道をリアルに描いていることにあります。力がある人ほど、コンクールなどに振り回されながら、自分っていったい何なんだろう、とアイデンティティの在処に悩むものなのでしょう。平凡な能力の持ち主が、いくら「音楽の価値ってコンクールで決まらない」などと言っても、そこで想定される音楽の厳しさのレベルが違いすぎます。
この映画で、クリエータとは何ぞや、という点について示唆されていたことを二つほど。
一つは、クリエータの本質とは何か、ということです。のだめはいくら勉強しても、あるいは落ち込んでも、その本質は変わりません。自由奔放で、ぬいぐるみと戯れる、おとぎの国のようなファンタジー世界がのだめ的本質です。だから、その本質に近いラヴェルのピアノ協奏曲が大変気に入ったのです(しかしピアニストが留学先でこの名曲を初めて聴いた、というのはいかがなものか)。
だから、のだめは自身の本質と一生つきあわねばならないし、それを大きく変えることは不可能でしょう。しかし、その表現方法は勉強や経験でいくらでも変わっていくかもしれません。
二つ目は、最高の演奏をしたから、もうこれ以上の演奏は出来ないとのだめが思った点。これはクリエイティヴィティについて、非常に重要な側面をあぶり出しています。
私の思うに、クリエータの重要な性格として
1.作品を必ず仕上げる執念
2.作り上げた瞬間に、それに飽きたらず、さらに良いモノを作らずにいられない感覚
の二つがあると思っています。
現状の肯定はクリエータ魂の堕落です。いつも満足しないこと、それはちょっといやな人間に見えますが、クリエータの重要な特質ではないかと思うのです。
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