2010年5月15日土曜日

23.音の速さ

音楽家にとって、音の速さに関する知見は意外と重要です。
音の速さは、気温や湿度などによって変わりますが、まあだいたい340[m/s]くらいです。時速にすると1225[km/h]。

これをもう少し音楽的な数値に照らし合わせてみましょう。
例えば、舞台の幅が34メートルあるとします(かなりでかい?)。そうすると、舞台の端から端まで音が届くのは0.1秒(「距離÷速さ=時間」ですね)。音符でいうと、テンポが150[bpm]のときの16分音符分の時間です。
昔、トリビアって番組が流行っていたとき、「携帯ではデュエット出来ない」というネタがありましたね。携帯では相手に声が届くのにやや時間がかかります。この状態でデュエットするとお互いの声を聞き合うほど、お互いがお互いより遅く歌うことになり、アンサンブルが出来なくなってしまうのです。

あまりに大規模な舞台の場合、音の遅れによって奏者全員が同じ音を聞けなくなり、それによって生ずるアンサンブルの乱れはだんだん無視できなくなります。
もうひとつやっかいなのは、私たちが舞台で聞く音は、直接音よりもむしろ、ホール内で反響して返ってきた反射音であり、さらに音は遅れている可能性があるということです。
従って、ホールがでかく残響も多い状態で、奏者が散らばり、テンポの速い音楽を演奏すると、ビートの縦を揃えるのが難しくなるでしょう。その場合は、核になる音を中央に置くとか、指揮者がなるべく機械的に(明瞭に)テンポを示すなどの工夫が必要でしょう。

PAせずに行う生演奏では、会場の響きに音楽が左右されます。特に残響時間は音楽に大きな影響を与えます。このような効果を理解した上で、その場で最適な音楽を奏でていきたいものです。

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