2012年8月10日金曜日

FabLife / 田中浩也



前々回も書いたパーソナルファブリケーションについて、現在の状況などを端的に紹介された本が出たので、早速読んでみました。

自分の欲しい物は自分で作ってしまえ、というのがパーソナルファブリケーションの基本的なモチベーションですが、こういった運動が世界的に連携をするようになっています。
工作機械を揃えて、作りたい人たちが集まり情報交換をする場はファブラボと呼ばれ、すでに世界中に多くのファブラボが作られ始めているのです。

各ファブラボは、そのファブラボを運営するマスターの趣味、方向性が色濃く反映されます。
例えば、ボストンのファブラボではたくさんのギークが集まり、電子回路が制作されていますが、そこのマスターのショーンは工作機械をインターネットで遠隔操作するプロジェクトを進めています。
同じくボストンの旧スラム街にあるファブラボでは、地域に住む黒人の小学生たちが学ぶための無料の救育施設として運営されています。

バルセロナのファブラボでは、メインで建築を扱っています。カッティングマシンのみで、プラモデルを作るように組み立て可能な木造建築を発表して話題を集めたそうです。
また、オランダのファブラボではオープンソースならぬ、オープンデザインという考えを進めており、若いクリエータたちが自らのデザインを共有するような試みを始めています。

これだけの事例を見ても分るように、工作機械で自分の好きな物を作る、という行為は、単に好き者がひっそりと集まって楽しむというだけでなく、教育、生活、ファッション、芸術など、これからの文化活動に大いに影響を与えるようなムーブメントになりうるのではないかという予感がしてくるのです。

またファブラボで使うべき工作機械が標準化されていくと、ある場所で作られたモノのデータさえあれば、別のファブラボでも製作可能となります。
今このようなネットワーク化が急速に進みつつあり、世界中のファブラボがネットワークで繋がりデータが共有化されれば、自分のオリジナル作品だけでなく他人の作ったものを自分が再度作ったり、それを元にまた新しいものが生まれたり、という限りないオープンデザイン文化が生まれる可能性があるのです。
それは、もはや工作マニアなオタクの世界ではなく、世界のトレンドの最先端を扱う文化発信基地にさえなり得ることを予感させます。

第二章では、筆者が一通りのモノを作れるようになるために受講した授業の様子が書かれています。ここでは工作機械の使い方はもちろんのこと、電子回路の制作方法、プログラミングの書き方に至るまで、一人でモノを作るのに必要なあらゆる知識を得る過程が描かれていて大変刺激になります。

日本では、現在つくばと鎌倉の二カ所にファブラボがあります。
ファブラボつくばは、元々はFPGAカフェと称して、カスタムICを簡単に作っちゃおうという活動をしていたようです。FPGAとカフェという言葉が結びつくのが個人的には非常にシュールな感じがしました。

このムーブメント、もう少しきちんとウォッチしていきたいと思っているところです。

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