人の声は声帯が震えることで発せられます。
それはか細いけれど、倍音を多く含んだ音です。声が、のど、口、唇を通る過程の中で、その音にいくつかのフォルマントの効果がかけられていきます。
声のピッチが変わると、もちろん同時に倍音のピッチも比例して変わっていくのですが、フォルマントはピッチによる変化がありません。
これまで音色の違いは倍音の含み方の違いと言いましたが、声の母音の違いについて厳密に言えばフォルマントの違いというほうが正しいです。
一見、声という楽器は管楽器に似ているように思えます。
確かにリードを持つ管楽器なら、リードが声帯で、管の部分がのどから口にかけた部分と対を成すように見えます。
音のタネと、それを増幅する仕組み、という意味では上のアナロジーは間違いではないのですけれど、音程や音色の作られ方という意味では大きく異なります。
管楽器では、穴を指でふさいだり開けたりすることによって管の長さを変え、管内で共鳴する音程を変化させます。
ところが、人の声は声帯の張りを調節して音程を作ります。当然ながら、のどから口にかけての距離は大きくは変わりません。舌の位置や形状を変えることによってフォルマントを形成し、音色を作っていくのです。
やや余談ですが、ヘリウムガスを吸って話すと声が高くなりますよね。
ところが、これは声の音程が高くなっているわけではありません。他の楽器と一緒にアンサンブルすることは可能です。しかし音が高く聞こえるのは、音色が明るくなって、カモのような声に聞こえるからです。もう少し正確に言うならフォルマントが高い周波数に移動しているのです。
同じことを管楽器でやってみるとどうなるでしょう。奏者にヘリウムガスを吸わせて楽器を吹いてもらうと、音色は変わらないのに、音程が変わってしまいます。
詳細な理由は省きますが、人の声の音程は声帯の振動で、管楽器の音程は管内の空気の共鳴で作るので、そのような違いが現れるのです。
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