これを読んでしまった以上、続編も読まざるを得ません。それにしても、発売直後でテレビや新聞で話題になっているこの本を本屋でレジに持ち込むのは、なんとなく気恥ずかしいものですね。
さてこの後は、予備知識ゼロでこの本をこれから読みたい方はご遠慮ください。
一番面白かったのは、幽体離脱したNHKの集金人の話。
こんな集金人がいたらマジ怖いです。執拗にドアを叩き、無視していると「あなたがそこで息を潜めて居留守を決め込んでいるのはちゃんとお見通しです」とか何とかいって、執拗に、公共の電波が云々とか、支払いは法律で云々とか、玄関の外ででかい声で演説していくわけです。
しかも、この小説の中で、集金人攻撃を受ける人物はいずれも、今ココにいることを知られたくなくて、静かに潜伏している人物ばかり。訪問者とは顔を合わせるなと言われている潜伏者宅に、「あなたがそこにいるのはわかっています」と言われる空恐ろしさ。どう考えたって、集金人を装った追撃者だとしか思えないじゃないですか。
読者に、ついに追撃者が・・・と思わせておいて、実は幽体離脱したNHK集金人の魂だった、なんていうのは、村上春樹特有のひねくれた設定ですね。
また、多くの日本人が何とかうまくNHKの料金を払わずに済ませられないか、と思っているそういう隠れた風俗を、こういうストーリーの中にうまく取り入れているそのセンスに唸らされます。
結局、二人の主人公が出会うところで話は終わります。謎は全く解かれないままです。でも、このままこの話が終わっても良いようにもなっています。さらに、別の話が進んでもいいようになっています。しかし、良くできたフィクションとは本来そういうものなのかもしれないとも思います。
いろいろな用語を散りばめ、全く疑問を解消しないまま、登場人物に観念的な議論をさせるってやり方は、ジャンルは違うけれど思わず「マトリックス」とか「エヴァンゲリオン」を思い出してしまいました。
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