かねてから日本で一番うまい合唱団だと、私が個人的に勝手に思っているBCJが、今回の合唱の祭典に参加しました。
BCJはご存知の通り、鈴木雅明氏が指揮を務めるバッハを演奏する団体。なんと、演奏会に先立ち、指揮者である鈴木雅明氏がワークショップにてバッハのモテットの演奏に関する講義を行いました。もちろん、私はこれを聴きに行きました。ワークショップの部屋はちょっと狭くて、立ち見が出るほどの盛況でしたし、多くの方が大変興味を持って来られたことが実感できました。
何といっても、鈴木雅明氏のレクチャーは大変うまかったと思います(私が参加したワークショップの中で一番よかった)。英語が極めて堪能で、そもそも、人前でしゃべるのが大変うまい。私にとって良かったのは、それでも日本人の英語ということで(発音がわかりやすい)、かなり聞き取りも出来たこと。ま、相当、頭をつかいましたけど・・・
このワークショップの凄かったことは、BCJのトップクラスの歌い手が参加しており、生演奏付きでの曲解説になったこと。セミナーの演奏で、こんなむちゃくちゃうまい演奏聞けるなんて、誰も思ってなかったと思います。
個人的に印象に残った話としては、ドイツ語を母語にしない我々だからこそ、歌い手に質問されてもちゃんと答えられるように調べたりするので、逆に理解が深まるきっかけになる、と言っていたこと。必ずしも日本人がバッハを歌うことをハンデとは思っていないところが素晴らしい。知的なアプローチが必要だからこそ、曲や歌詞について調べざるを得ない環境にいる彼らが良い演奏をできるのだと思いました。
最後の質問コーナーで出た話も面白かった。BCJがヨーロッパで演奏会を開いた際、ほとんどのジャーナリストが絶賛してくれたそうですが、一つだけ批判があったそうです。いわく「あまりに言葉をはっきり言い過ぎている」。本人たちは、言葉をはっきり出すことに一生懸命になって練習していたのに、それが思わず批判の言葉になってしまった、というのは、ある意味、彼らの努力が報われたといえるのかもしれませんね。
そして、その夜のBCJの演奏は本当に素晴らしかった。
私がなぜ、彼らの演奏を素晴らしいと思うのか。BCJの合唱団員一人一人は、ソロでもやっていけるほどの優れた歌手です。実際彼らの何人かは曲中でソロを取っていました。しかし、ひとたび、合唱のパートの一人となると、アンサンブル重視の歌い方にきっちりと切り替え、ボリュームバランスや、パート内の揃えなどに最新の注意を払っているのがよくわかるのです。
究極の合唱には、歌い手個々人の知性がどうしても必要です。BCJはその事実をあらためて我々に突きつけているように思うのです。
もちろん、レパートリーが限られている、というのも、演奏の純度の高さの一要因ではあるでしょう。それにしても、あれだけのメンバーを揃えているこの団体は、もう日本では最高レベルの合唱団の一つであると断言できます。
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