コンサートの中で飛びぬけて印象が強かったのは、いずれも北欧の合唱団。
まずは、初日のオスロ室内合唱団。もう曲がいいとか悪いとか、そんな問題じゃない。音色だけで人を感動させられる、というのはとんでもないことです。本当に、ただのドミソがハモっただけで、澄み切っていて、それでいてストレートな響きのある声で、もう涙が出そうなくらい感動。ビンビンに鳴ったまま、ピアノからフォルテまで変幻自在に声がコントロールされているのです。全ての曲が一つなぎになるような、クールでシャレたステージングもまたよかった。大体ですね、皆んな背が高くてかっこいいんですよ。指揮者も長身ですらっとした(ちょっと攻撃的なイメージの)女性で、これがまたかっこいい。民謡ベースのシンプルな曲が中心だったのですが、その圧倒的な響きにもうただただ驚いていました。こんな声は、絶対日本人には無理です。正直、世界との壁を感じてしまいました。
もう一つ、面白かった団体は、同じくノルウェーのノルディックヴォイセス。ここは6人のボーカルアンサンブル。古楽から現代まで抜群のアンサンブルセンスで軽々とこなします。初日の「鳥の歌」では、もう鳥の歌声で、これでもかというくらい音楽を崩していくのに、アンサンブルの骨格が崩れないのは、もう一言プロの技としか言いようがありませんでした。土曜日に演奏した現代曲も面白かった。はっきり言って歌ではなくて、パフォーマンスに近いのだけど、彼らのプロとしての演奏魂に触れた気がしました。当然のことながら、一人一人がソリストとして活躍できるほど素晴らしい声の持ち主なのだけど、ひとたびアンサンブルになると、これが一糸乱れぬディナーミク、アゴーギグを聴かせます。この団体が根本的に持っているユーモアセンスも堪能。この芸風は、キングスシンガーズにとても近いものを感じました。
ちょっと特殊ものですが、デンマークのヴォーカルラインはマイクを使った合唱団。いわゆるヴォイパ付き。アカペラだけどなぜか30人近い人数。もちろん、一人一人がかなりの実力ですが、マイクワークも相当研究していると思いました。私自身はマイクを使った合唱の可能性というのは興味はあるのだけど、残念なのは彼らが単なるポップスのアレンジに留まっている点です。演奏した曲もミディアムテンポが多く、曲のバリエーションに乏しい感じがしました。マイクを使うからこそ、もう少しレパートリーの可能性を追求して欲しい気がします。例えばアディエマスみたいな・・・
北欧以外の演奏では、コンゴのラ・グラースとか、インドネシアのパラヒャンガン大学が、歌と踊りで楽しませてくれたのが印象的でした。人を楽しませるということをきちんと追求している姿勢は見習うべきだと思いました。
結局、私が思ったのは、日本の合唱にはエンターテインメントが足りない、ということです。アマチュア中心、コンクール中心という日本の合唱界の現実が、演奏活動をますます内輪なものに、そしてシリアスなものへと変えてしまいます。どうやったら聴衆が楽しむのか、そういう最も基本的なことを外国の合唱団から学んだような気がしました。今回の合唱の祭典がきっかけにそういう機運が日本に高まればいいのですが・・・
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