2010年10月8日金曜日

好きな音楽ベスト50(2010年版) 第10位〜第6位

ちょっと引っ張ってゴメンなさい。この辺りから、語りたいことも増えてくるのです。

10位:氷の世界/井上陽水
まさにシュトルムウントドランク。どうしようもない衝動と焦燥感。世の中の現実は、強すぎる感受性にとってあまりに厳しい、そんな心の叫びが集約されている。優れた芸術として後世に残るアルバムだと私は思う。
表題作「氷の世界」のシュールさはすごい。記録的な寒さの冬に、窓の外でふざけて声を枯らして林檎売りの真似をしている人がいるだろうか? そんな歌詞を意味のまま解してはいけない。そこから感じられるのは、"氷の世界"にいる追い詰められた人間の妄想そのものである。「声を枯らす」「記録的」という言葉遣いも文字通りの意味ではなく、単なる気持ちの強調表現のように感ずる。最前線の現代詩のような、強い表現を持ったアート性のかたまり。

9位:太陽と戦慄/キング・クリムゾン
キング・クリムゾンは60年代末から活躍したプログレバンド。43位の「宮殿」もいいのだけど、私的には「太陽と戦慄」が一押し。何と言っても邦題の「太陽と戦慄」という言葉が秀逸。原題はなぜか、全く意味が違うのです。
特に終曲「太陽と戦慄 Part2」の変拍子による切迫感は大好き。恐らく、当時のミニマルな現代音楽にも影響を受けているのではないだろうか。ちなみに拙作「だるまさんがころんだ」冒頭の10/8拍子のリズムの原型は、実はこの曲だったりする。クリムゾンの方が、暗くて陰惨な感じだけど。

8位:Place to be/上原ひろみ
今、私の好きな音楽を語る際に上原ひろみは外せない。ジャズピアニストではあるけれど、彼女の音楽はいかにもといったジャズでは全然無い。むしろ、私の好きなプログレテイストがふんだんに入っていて、それがたまらない。プログレ、上原ひろみ、プロコフィエフなどに共通するのは、メカニカルでメタリックな肌触りの無機的な構造性なのだろう。そしてそれを達成するための圧倒的なテクニックによって、上原ひろみの音楽は唯一無二なものになっている。
さて、このアルバムについての記事はこちら
この曲集の楽譜も入手。もちろん弾くためじゃないです。どちらかというと、ピアノの譜面を書くときの参考のため。

7位:月の光/冨田勲
高校の時、冨田勲を初めて聴いた。その時のアルバムがこの「月の光」。ドビュッシーのピアノ曲を独自の解釈によってシンセサイザーで編曲したこの音楽、当時の私は、すごく前衛的に思えてすぐには熱狂しなかったのだけど、何度も聴いているうちにだんだん好きになっていった。
何と言っても、その夢見心地なサウンドが、まるでこの世ではない別の世界にいるかのように響いた。今思うと、10代、20代の私の好みのキーワードは「幻想」だった。何しろ夢のような世界が好きだった。シンセサイザーはその世界に自分を誘う魔法の機械のように思えた。そして、その魔法の箱を自ら作ることになろうとは・・・

6位:ロ短調ミサ曲/バッハ
31位のマタイを遙かに超えてのランクイン! いくらマタイが名曲とは言え、出番の少ない合唱団は、どうしても曲全体を熱心に聞くことが出来ない。それに比べたらロ短調ミサは歌いっぱなし。ドイツ語に苦しめられることもなく、バッハの壮大かつ緊密な音の世界に浸れる、究極の合唱曲のように思える。
2001年のドイツ演奏旅行で、恐れ多くもこのロ短調ミサ曲を歌った。アカペラのところで、合唱団全体が半音ピッチが下がった事件が心に残る。そのときの旅行記はこちら

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