合唱指揮者ネタもう少し続けてみましょう。
基本的に合唱はアマチュア主体ですが、その指導者には本物のプロからアマチュア叩き上げまでいろいろなタイプが存在します。
もちろん、実際の指導の実力や音楽性だけで評価されるのであれば何の問題も無いのですが、アマチュアというのはどうしても経歴などに影響され易いし、そういったことから微妙な劣等感を感じる指導者もいることと思います。
そんなわけで、合唱指揮者として活躍されている方をちょっと類型化してみたいと思います。その出自によって、指揮者としての傾向はかなり違うような気がするからです。
●アマチュア叩き上げ派
音楽を専門に学ばず、趣味で合唱をしていた人がそのまま指揮者になってしまったというタイプ。その多くは、高校、大学と合唱経験があり、特に大学時代に学指揮などを経験して、音楽の魅力に取り憑かれ足を踏み外してしまった、みたいな人が多いです。
あくまで副業として指導する人もいますが、中には意を決して専業とする人も。専業化した場合、合唱団にあまり選り好みはできず、反骨心みたいなものが逆に削がれる可能性もありますが、そこから先はもうそれを肯定できるような人間力でやっていくしかないと思います。
いずれにしろ、強い情熱を持ち、高い理想を掲げている人が多く、全体を見渡せばこういう方々の活動には本当に敬意を表したいと思いますし、日本の合唱を牽引している大きな力となっています。
●学校の先生がコンクールで頑張った派
毎年のように、合唱コンクールの中学、高校の部で良い成績を取れる学校があります。そのほとんどは指導者の功績といって良いでしょう。日本全国、たくさんの学校がコンクールに参加する中、そういった指導者の何人かがカリスマ化し、有名な指導者として名を馳せるというのは日本特有の現象かと思います。
こういった方々が、学校だけでなく一般合唱団の指導をしたり、連盟の仕事をしているうちにプロ的な地位を得るというパターンはかなりあります。
普通考えれば、そういった方々は音楽の先生と思うのですが、そうでない人もたくさんいます。数学の先生とか、国語の先生とか、その人なりの背景で音楽を作っていくので、逆にそれが面白い感じもします。
アマチュア叩き上げと同様、ある種の上昇志向と、強い熱意を持った人が多いと感じます。
●地方の声楽家派
一般合唱団としては圧倒的な多数なのが、こういった指導者ではないでしょうか。特にコンクールに出ていないような団体においては。
もちろん、声楽家として活動していても、普段は学校の先生というパターンもあります。ただ上のコンクールで頑張った先生、というのと元々声楽家だった人というのは、その出自の違いは明白で、またその指導態度の違いもかけ離れているように思います。
声楽家指導者の良い点は、歌って指導できるということ。もうこれは素人に対して圧倒的な効果があります。プロが目の前で「こう歌って」と、そのまま歌ってしまうわけです。理屈じゃない説得力があります。
もちろんこれは裏返せば悪い点でもあって、歌い手を思考停止に陥らせ、合唱が単なるおうむ返しになる危険性を孕みます。それに気付ける指導者と気付けない指導者の違いが、合唱団の善し悪しの境目となるでしょう。
声楽家には温和な方が多く(あくまで私見ですが)、ほのぼのとした団となることが多そうです。
●バリバリアカデミック指揮者派
音大で音楽を学び、海外留学で専門的に音楽を学んで、音楽で生活するプロの指揮者。どんなに若くても、経歴だけで先生と呼ばれるだけの貫禄をもちます。
アマチュアは、上のように目の前で直接歌われる声楽家や、専門で勉強したという経歴にも弱いのです。やっぱり教えてもらうには、自分の師匠がどれだけ優れた人か、ということにこだわるからでしょう。「私の歌の先生は、芸大出てドイツで本場の音楽を学んできているのよ〜」みたいな。
叩き上げと正反対のその出自は、合唱団の方向性に大きく影響します。こういう人はたいていコンクールが嫌いです。恐らく、アマチュア叩き上げのパワーを良く知っていて、そういう人と同じ土俵で勝負することに微妙な違和感を感じるからでしょう。プロとしての自負とでも言うべきか。
また、オーケストラ共演ステージなど大規模な演奏会を行う団体ではこういう指導者が多いですね。人を束ねるのにやはり経歴が必要となるのでしょう。
個人的には、このタイプの方々はやや保守的で、だから安心できるという人も多いでしょうが、どん欲な表現意欲とか、斬新な音楽表現とかからはやや離れるイメージがあります。
他にもいくつかパターンがあるとは思いますが、大まかに言えば、上の四つの類型でかなりの指導者を網羅できるのではないでしょうか。
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