2007年4月14日土曜日

楽器の発達と標準化

自分でも大それたテーマだなあ、と思いつつ、相変わらず思うにまかせて書いてみます。
本来楽器というのは、絶えず改良が加えられ、変化していました。現在のオーケストラの楽器だって、古典派くらいの時代までは試行錯誤の連続だったのです(それが古楽というジャンルを生み出す要因でもあるわけです)。楽器の発達とは、前も言ったように扱いやすさや大音量化の追求であり、ピアノのような鍵盤楽器だけでなく、管楽器、弦楽器、そして打楽器もどんどん進化していきました。
しかし、音楽文化が国境を越え始めるに従い、進化と同時に標準化が必要になってきます。でなければ、オーケストラの編成の規格化が出来なくなり、ひいては同じ曲を世界各地で演奏することが不可能になります。
この標準化は、例えばJIS規格とか、最近であればDVDの規格とか、昨今ではそういう形の標準化団体があるわけですが、恐らく楽器の標準化にはそんな人為的な動きは無かったように思います。つまり、長い時間をかけながら、いろいろな人が取捨選択をした結果、なのでしょう。そういう意味では、自然淘汰による生物の進化と似ているかもしれません。

しかし、実は標準化は進化を妨げる作用を引き起こすことがあります。
例えば、誰かが6弦あるバイオリンを作ったとします。それにより音域や表現が拡がり、作曲家が新しい音域や表現で曲を作るかもしれません。しかし、その曲は新しいバイオリンでなければ演奏できません。そのバイオリンを演奏できる奏者、それを抱えるオーケストラというインフラが整備される必要があります。それは取りも直さず標準化された形態を変更する作業であり、世界中が同意しなければ先には進まないのです。

クラシックが標準化、規格化されつつあったのとほぼ同時に、全く規格外の新しい形態の音楽が発展し始めました。私も歴史的にそれほど詳しいわけではないですが、それがいわゆる現在のポピュラー音楽の大元になっているはずです。例えば、楽器としては比較的最近登場したサックスがクラシックよりもポピュラー音楽に使われることが多いということも、こういった流れと関係が深いのではと思います。
こうやって、クラシック音楽が楽器の発達(編成の規格の変更)を許容しづらくなった20世紀に、ポップスやロックと言われる音楽はそれを尻目に楽器の発達を貪欲に取り入れてきたというわけです。
そして、何より20世紀(特に後半)における楽器の大変革というのは電気化という点にあったと思います。

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