2007年4月16日月曜日

合唱名曲選:フォーレ・レクイエム「Sanctus」

とある助っ人要員で今日、フォーレのレクイエムを歌ったのですが、やっぱりいい曲だなあ、フォーレク。
フォーレの曲の良さというのは、ひとえに流麗な和音展開にあるのではないかと思います。そこで、今日歌った記念に(?)、Sanctus の和音を解析してみます。といっても、「Hosanna」の前まで。

ハープのアルペジオが曲の雰囲気を決定していますが、和声的に注意すべきなのは、これが第三音を最低音に置いているというところ(第一展開)。根音や第五音でなくて、第三音というのが独特の浮遊感を感じさせます。和声が移ろっても、明確な調性を感じさせないような感じをうけます。
基本的に "Eb/G" で曲は進行しますが、その後は以下のようになります。

[A]
| Eb/G | Eb7/G | C7/G Bb7/Ab | 〃 | Eb/G …
[B]
| Gm | Dm/F | Gm6 | D/F# | 〃 | 〃 | Bb7 …

練習番号[A]の "C7/G" は面白い音なのだけど、ドミナントとして "F" には向かわずに "Bb7 " に移行します。このときベース音の "G→Ab" という動きが自然なので "C7→Bb7" という和音進行が変に聞こえません。おかげで、この後、曲はまた Es-dur に戻れます。
次に面白いのは、練習番号[B]で、あれあれと思っているうちに、半音下の調に転調してしまうところ。ここも、"Bb7"から一旦 "Gm" に行き、三の和音だったのを二の和音に読み替えて、次の "Dm" でF調に転調、しかもその次を "Gm6→D" として、気が付くと Es-dur が D-dur に転調してしまいます。何と鮮やか。
ちなみに、この D-dur は、練習番号[C] の直前で、"Bb7" に無理やり行った後、Es-dur に戻ります。

[D]
| Bbm/Db | GbM7 | Db/Ab Ab7 | Bb/Ab Gm Bb7/F |
| C7/E Bb7/F | Eb/G Ab | Bb7sus4 Bb7 | …

「オザンナー」と盛り上がる前に、一拍単位で和声が移ろうところ。気持ちいいですねえ。特に "Bb/Ab→Gm→Bb7/F" とバスが降りながら、Des-dur ぽかった雰囲気をまた Es-dur に戻そうとする動きがいいです。
フォーレの和声は現代から見れば、複雑でもないし、テンション音も多くありません。しかし、ベース音を根音から外して、浮遊感を漂わせながら次々と転調していく様は、シンプルでありながら学ぶところがとても多いのです。

2 件のコメント:

  1. たしかに、浮遊感がすごいと思ってました。
    謎が解けてすっきりしました(笑
    ��回歌いましたけど、また歌いたい曲です。

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  2. 浮遊感は和声だけでなくて、低音楽器をあんまり使わないというオーケストレーションも関係していると思います。
    いい曲だなあ、と思いつつも、ベースは結構暇なんですよね・・・。

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