2006年6月2日金曜日

嫌われ松子の一生

かなり前から、しつこいくらいに映画の予告編で見せられて、最初のうちはバカバカしそうだなあ、と思っていたんですが、どうもなんか気になるんです。公開が近づくにつれ、メディアなどから面白そうな雰囲気が漂ってきて、ちょっと見てみるか、という気持ちに変わっていきました。
そんなわけで見てしまいました。「嫌われ松子の一生」。
何といってもタイトルがインパクトありますね。原作は読んでいないけど、不思議な吸引力のあるタイトル。

映画を見終わっての率直な印象は、もう~濃すぎる、という感じ。映画全体が超ハイテンションです。役者の演技が、というわけでなくて、ストーリーの展開、映像効果(色彩、アングル、魚眼の使用、花の氾濫などなど)、音楽(まるでミュージカル)といったいろんな要素が、全てテンション高いんです。はっきり言ってやり過ぎです。もうちょっと抑えるべきだとは思いますが・・・、それがこの映画の売りとも思えるし・・・うーん。
それに、このくどいとも言える各種効果の割りに映画全体が長いです。観ているほうもくたくたです。私は後半、このテンションの高さにちょっと付いていけなかったかなあ。

しかし、それでも、この映画にはクリエータ魂が炸裂しているのを感じました。外見上のバカバカしさに惑わされると気が付かないかもしれないけど、かなりの芸術センスを感じます。
特殊映像効果ばかりで、映画が平坦になってしまったキャシャーンと違うのはそういうところ。ストーリーに破綻がなく、(私がよく言うところの)構造性がきちんとしており、小ネタの仕掛けもうまい。
それに、陰惨でショッキングなシーンと、バカバカしいくらいのファンシーなシーンを共存させるという大胆さ、シリアスなシーンの中にも笑いを失わないこと、それでいて、きちんと役者の演技で思わずほろりとさせられること、一つ一つがプロの作りです。「ダンサーインザダーク」の陰鬱さ、「チャーリーとチョコレート工場」のバカバカしさを高度なレベルで結合したとでも言いましょうか・・・

中学教師から風俗嬢、殺人犯、そして最後はほとんど浮浪者、といたる転落そのものの人生。人々から後ろ指を指される一方で、男たちに愛を捧げ続ける神のような存在でもあったことを仄めかせて、人生の幸せとは何か、結論の出ない命題を見る者に提起します。
そういう意味では内容は極めて重厚です。しかし、その表現方法は、そうとう軽薄です。そして、そんな芸術のあり方に個人的には共感を覚えてしまいました。

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