別に本物の数学の論文を読んだわけではありません。見ればわかりますが。
これは、フェルマーの最終定理に挑戦した数学者たちのドラマを描いたノンフィクションです。
数学だなんて難しい、と思う必要はありません。数式は多少は出てきますが、その部分に関しては中学程度の学力で分かる程度。それをこの著者サイモン・シン(訳:青木薫)は、素人にもわかるようにうまく説明しています。
何といっても、三百年以上もの間、解かれることのなかったこの定理に、どんな人たちが挑戦し、そして敗れ去ったか、そしてどうやってついにこの問題が解かれたのか、その過程を読みながら追体験していくことはスリリングだし、謎を解くために一生をかけた男たち(女性学者もいましたが)のロマンがこの本からひしひしと伝わってくるのです。
私も数学の世界は詳しくないけど、へぇ~と思うような事実もたくさん知り、勉強になりました。登場人物もなかなか魅力的です。ピュタゴラス、ケプラー、オイラー、ゲーデルといった有名人も出てきます。決闘で死ぬ前の晩に、自分の研究を一晩でまとめて手紙を残したガロアとか、女性にふられて自殺をしようとするがフェルマーの最終定理のアイデアを思いつき自殺を延期したヴォルフスケール(結局、自殺した彼はその遺産をフェルマーの最終定理を解いたものへの懸賞金とする遺言を残す)といったドラマティックな逸話の数々。これだけでも、十分楽しい読み物です。この物語の最後、アンドリュー・ワイルズが1994年に最終定理の証明を完成するくだりは感動のクライマックスです。
実は、そのような大問題であるにも関わらず、フェルマーの最終定理というのは非常にシンプルな問いです。xのn乗+yのn乗=zのn乗(nは3以上)を満たす、x,y,z の整数解は存在しない、というもの。
正直言って、ワイルズが証明した筋書きの説明については全くわからなかったけど、素数の話とか、パズルの話とか、数学的な小ネタに満ちているのもこの本の面白さの一つです。
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