12月の演奏会の曲紹介シリーズということで、スヴィデルの「Pater Noster」の紹介をしましょう。
スヴィデルは1930年生まれのポーランドの作曲家。80歳ですから、もうかなりの高齢ですね。この人の曲からも私好みの論理的構築性、メカニカルな音の運びが感じられて、何作か曲を聴く度にどんどん好きになっていきました。
今回のステージで取り上げる作品「Pater Noster」は、ポリフォニックな要素が多い作品。
一般的にポリフォニックな音楽は古典和声的な世界の上に成り立つものですが、スヴィデルは現代的な響きと、ポリフォニックな構成をうまくブレンドさせています。こういう手腕は、情緒的というよりは極めて理知的な作業。
特に冒頭3ページは和声というより、旋法的な感覚で作られていて、その中で縦の響きに破綻をきたさないように作るのは、パズルを解くような楽しさだったかもしれません。16分音符の同音による小刻みのビートと四分音符ベースのフレーズの対比がとても面白く、演奏の際には二つのモチーフの性格をきちっと歌い分けたいものです。
その後、曲はffになって音量的な頂点を迎えます。この力強くかつ繊細な和声の流れもとても素晴らしい。でも、そんなにディヴィジも多くなくて、テンション音を多用しているわけでもありません。こういう和声展開って邦人曲ではなかなかお目にかかれない美しさだと感じます。
その後の andante のポリフォニーがまたメカニカル。きちんと和声のアナリーゼをすれば何らかの流れは見えてくるかもしれません。ちょっと面倒でそこまではしてませんが、響き的には減七和音の連続をベースに作られている感じはします。この緊迫感を持続させる音楽の展開は、この作曲家の真骨頂と言えるかもしれません。
それまでの厳しい雰囲気から、C-durの優しい響きに変わるところ(11ページ)、恐らく Pater Noster のグレゴリオ聖歌ではないかと思われる部分も美しい。ベース下とソプラノ下の対旋律の掛け合いが天国のような幻想を感じさせます。
全体として厳しい雰囲気の音が多く、どこまで緊迫感を湛えながら演奏できるか、というのが演奏の成否の鍵を握るのではないかと思います。細かい音程のズレが、曲の仕掛けを崩してしまいかねないので、曖昧な和音にならないよう、ピッチにも十分気をつける必要があるでしょう。
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