昨年の本屋大賞受賞作。なんか本屋大賞ウォッチャーみたいになってますが、この本、もともと妻が新幹線の中で読んで面白かったから読んだら、と手渡されたもの。
率直に言って、この小説、一言でいえば「不快」です。しかし、読まずにいられない不快さなのです。人の心の中のマイナス感情ばかりが増幅されます。嫉妬、嫌悪、蔑み、そして復讐。ディテールも細かく描かれ、内容のリアルさがまた薄気味悪さを醸し出すのです。
本書を貫く「熱血」嫌いな感性って、わかるわかる、と思う人も多いのでは。私も内心ほくそ笑みながら読みましたが、この著者自身、無闇な熱血礼賛傾向を嫌っているのでしょう。そういう、建前はそうだけど、でも本音は違うようね〜みたいな感じが赤裸裸に書かれていて痛快な反面、倫理的な危うさも伴います。
ちょっと前に書いた「天地明察」と正反対な小説。かたや、男のロマン追求、難事業成功物語ですが、この小説は、女の愛憎劇、救い難い陰惨な結末、という感じ。真逆でも心に何か刻まれる、という点では、いずれも強い力を持っているわけですが・・・。
0 件のコメント:
コメントを投稿