松尾スズキ監督の「クワイエットルームにようこそ」を観ました。
精神病院の女性隔離病棟に自殺未遂で入れられた主人公、明日香がそこで様々な人と出会い、また自身がそこに入るまでの人生を反芻しながら、二週間で退院するまでの様子を描いた映画。
もちろん、そこで登場する人々は、一癖も二癖もある人たち。心の痛みゆえにその場に居ざるを得ないという、人生の負の部分が凝縮されたような空間。
もちろん、内容は相当シリアスなはずなのだけど、前半はひたすらギャグ中心で、正直、私は涙を流しながら笑ってました。これって、やっぱり演劇のノリなんですね。役者もみんな上手いし、間の取り方なんかも絶妙。
ただ、笑いの方向性というのが、確かにセンスはあるのだけど、ナンセンス系、シモネタ系、自虐系という、ちょっと日本的になってしまうのは仕方ないところか。
正直、全体的に若者視点というか、純文学的なのだけど、興味の対象が自己の内面だけというか、そういった感じが私の感性とはちょっとずれていた感じがしました。太宰治を読んだ後の違和感とでも言うべきか。
主人公の自堕落で自己中心的な生活、もちろん自分でもそれを良いものと思っておらず、常に自責の念にかられているのだけど、現実の容赦ない事件がどこまでも主人公を追い詰める。こういう破滅型キャラだからこそ、分かり合える美学というのがこの映画にはあるのでしょう。
基本的に、ついつい慎重に生きてしまう私には、この映画のような人生は望んでも送れないだろうな、と思ってしまいます。
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