多重録音とは何かというと、つまり、一度に全パートを録音せずに、一パートずつ別々に録音するということなわけです。従って、アカペラでいうなら、ソプラノ、アルト、テナー、ベースと4パートなら4回別々に取るわけです。
このとき要求されるアンサンブル能力というのは、通常の合わせのときとまた少し異なるものです。指揮者と演奏者全体がその場その場で音楽を作り出すような通常のアンサンブルのシチュエーションと違って、常にガイド用に作られたクリック音やカラオケを基準にし、それに各演奏者が合わせるという作業が必要になるのです。それは一見、アンサンブルによる生きた音楽感覚をスポイルするように思えますが、まあはっきり言わせてもらうと、私のような素人レベルではそんな偉そうなことを言えるレベルじゃないという状態だったりします。
だいたい、クリック音に合わせて歌っているつもりなのに、全然走っていたりとか、フレーズの難しさにテンポ感が連動していて、リズム感のない情けない録音となって、容赦なく自分の下手さ加減が暴露されるわけです。
もちろん、一発取りのほうが全体の雰囲気やアンサンブルの面白さをよく捉えることが出来るのでしょうが、それはある程度うまく歌える人たちの話。まず自分自身の演奏家としてのソルフェージュ力と、敢然と向かい合う必要があります。そこで打ちのめされてだいたいやる気をなくしてしまうのだけど・・・
こういった録音の便利機能として、特定の箇所だけ録り直しすることができます。いわゆるパンチイン、パンチアウトというヤツです。ただ、これもなかなか難しくて、後で特定箇所だけパンチイン録音すると、音量とか音質とか、歌いまわしなんかが前後と微妙に違ったりして、意外と難しいことが分かります。こういったときなど、音楽の流れというものの大事さを痛感します。
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