今回は、団全体の並びの形について考えてみます。
以下のような4つのタイプを挙げてみました。
まずは最も一般的な横一直線型。あるいは、単純な長方形型。
美観的にオーソドックスですし、音響的にも安定しているので、ごくごく普通に使われる並び。
この場合、各団員は通常前を向いて歌いますから、両端に行くほど、また前列に行くほど、指揮者の見える角度がきつくなります。
指揮者が団に対してある程度離れていると良いのですが、少人数だと近距離の場合も多く、場所によって指揮者がかなり見えにくいという問題があります。
指揮者が見えにくい、という状況を極力避けたのが、扇形。
特に少人数アンサンブルには多いですし、指揮者がいない場合などは、アイコンタクトを取るため、物理的にこうせざるを得ないことも多いでしょう。
教会のような十分に響くような場所においては、歌い手が真正面を向かなくてもそこそこ聞こえる場合があります。こういった場所で少人数で歌う場合、扇形に配置するのがベストな選択と思われます。
また、見た目のイメージとして、合唱団全体の一体感のようなものを感じさせます。お互いがお互いをみながらアンサンブルしている雰囲気を醸し出すことが可能です。
しかし、これは諸刃の刃で、ある程度団員が多くなると、歌い手が指揮者ばかりを見ていてお客様不在な音楽という印象を与えることもあります。ある程度、大きめな合唱団では扇形を多少緩くするなど、工夫の予知はあるかもしれません。
歌い手が前を見ながら、かつ指揮者が見えにくいという欠点を補うのが台形型。
一番指揮者が見えにくい、両端の前列をカットし、歌い手の指揮者が見える角度をある範囲内に収めることが可能です。
うまくシンメトリに配置すれば美観的にも悪くありません。いずれにしてもそれほど大きくない合唱団で用いることになります。混声の場合は、合唱団の並び その1でも書いた「前後型」と相性が良いです。
ただし、後段両端の歌い手は合唱団全体の重心から遠い位置になり、やや歌いにくくなるでしょう。そういう意味ではある程度の実力のある団で無いと難しいかもしれません。
扇形に比べるとアットホームなアンサンブル感よりも、端正でフォーマルな印象を与えるかもしれません。
最後は、一人一人が舞台全体に散らばる拡散型。
これはもはや演出の一つと考えていいかもしれません。少なくとも、普通の合唱曲を敢えてこのような形で歌う必要は無いでしょう。楽譜がこのような配置を指示しているか、オペラ的な背景のある音楽か、お客さんを巻き込んで楽しく歌いましょう的な状況を作るか、そのような状況が考えられます。
基本的には、団員同士の距離が遠くなって、モニタリングがしづらくなり、指揮者も見えにくくなるので歌う側の負担は大きくなります。
もっとも、演出としての効果は大きいので、演奏会の中で最後の1曲のときとか、派手で面白い曲を敢えてこの並びにしてお客さんを楽しませようとか、そういうアイデアには使えると思います。
詳細に見れば、もっといろいろな並びがありそうですが、大まかに言えば結局、美観、会場の響き、歌いやすさ、音楽の印象などによって、決まるものと思われます。こういった工夫は演奏者(指揮者)の創造性が発揮される部分ですから、センスある選択をしたいものです。
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