調律法としての純正律には非常に大きな欠点があります。
それは、完全五度「ソ」の完全五度上の音である「レ」と、完全四度「ファ」の上の長三度である「ラ」は、本来完全五度の関係であって欲しいのですが、ハモる音程からはかなりずれた、調子外れのピッチになってしまうということです。前回の数値を計算すれば、「レ」と「ラ」が2:3の関係になっていないことは理解できるでしょう。
一般に純正律と言うと、和音が非常に美しく響く代名詞のように思われていますが、残念ながら調律として採用するということはほとんど無いと言っていいでしょう。特定の音程を完璧にするために、他の音程が破綻してしまっては結局のところ音楽には使えないからです。
音階の各音の細かいピッチの決め方のことを音律と言いますが、この音律にはたくさんの種類があります。
音律について語るとき、いくつか注意すべき点があります。
まず音律は各音程のピッチを微調整出来ない楽器のためのものです。例えばバイオリンはフレットが無いので、自由なピッチを作り出すことが出来ますし、管楽器についても息の送り方などでピッチを調整することが可能です。
ピッチを微調整出来る楽器は、厳密な音律に縛られる必要はありません。その場その場で最も美しく響くピッチで演奏すればいいのです。最も美しく響くピッチとは、まさにこれまで書いてきたハモる音程のことです。
しかし、鍵盤楽器はその場で各音のピッチを微調整出来ません。そのため、事前に音律を決めて調律をする必要があるのです。
次に、音律には完璧なものはありません。何かを優先すれば(ある音程を優先すれば)何かが(別の音程が)悪くなるのです。そういう意味では、音律は常に妥協の産物です。
そして何を優先するかは、時代やジャンル、作曲家の考え方によって変わってきます。ですから、特に古い音楽を演奏するときの音律を決定するには、いろいろなことを事前に調査する必要が出てきます。
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