2009年5月5日火曜日

スラムドッグ$ミリオネラ

アカデミー賞受賞作。やや社会派的な内容ぽかったのでそれほど食指は動かなかったのだけど、GWの暇に耐えきれず見てみることに。
結果的には、やはり社会派なのだけど、必ずしも重く暗い雰囲気ではないし、シリアスな内容と共にそれを吹き飛ばそうとするくらいのパワーと前向きさを持った、不思議な映画でした。

何と言っても、ストーリーの基本的プロットが面白い。無学なスラム育ちの青年がミリオネラに出演して、次々に難しいクイズを解いていきます。そのクイズの内容とリンクさせながら彼の生立ちを語っていくうちに、その厳しい現実が彼にクイズの解答を与えていたということが次第に明らかになります。
もちろん、所詮フィクションですから、偶然彼の生涯に関係あるクイズばかりが出るなんてことはあり得ないわけですが、それでも無学な人間がクイズを次々解いていくという爽快さ、皮肉さ、というのが、この映画の面白さの真骨頂なのでしょう。
これだけの厳しい少年期を過ごしてきた主人公ジャマールなのだけど、彼を突き動かしてきたのは愚直なまでの一途な恋愛感情、というのも、深刻な物語をシンプルな気持ちよさに見せかけているのだと思います。

しかし、この映画に描かれるインドのスラムの実態というのは、日本人にはやや残酷に過ぎ、こういった映画は日本では流行らないだろうなあとも思います。子供を物乞いさせるために、わざと不具ものにするシーンなど、直視できない痛ましさです。そして彼の周りの人間も、暴力で次々死んでいく。
経済成長するインドの中でこういった貧民たちの裏社会が存在していることを、声高に主張すること無く、この映画の中で淡々と描写します。
それにしても映画全体がそれほどシリアスにならないのは、スピード感、テンポ感溢れたてきぱきとした進行、映像とリンクしたビート感ある音楽、躍動感溢れるカメラアングルなど、映画の細かい点での技術のおかげ。やけに追跡シーン、逃走シーンも多いし、それがこの監督の持ち味なのかもしれません。
ややシニカルで辛辣な映像作りもアメリカ的正義感とはちょっと違っていて、私にはちょっぴり小気味良く感じました。

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