2005年6月29日水曜日

0番目の男/山之口洋

zeroban実は私、この作家自身に興味があるんです。
東大出て、松下電器で技術者になり、ソフトウェア開発のプロとして書籍も出すほどの活躍をしていたのに、文学賞を取って、あっさり作家に転向。寡作ながら質の高い作品を書き、直木賞候補にもなりました。
私もソフト開発の一端を担うものですが、私から見ても「オブジェクト指向プログラミング」の本を書く人なんて神様みたいなものですよ。いまどきなら、それだけの活躍だけでも相当稼げるはず。
しかし、です。そんな人が小説を書いて、それがいきなり文学賞を取っちゃう。なんというか、何でもこなしちゃうスゴイ人のように思えてしまうんです。本を読んでいても、本当にそつがなく、文章も確か。どこで作家修行をしたのかと問いただしたくなります。でも、恐らく小さな労力で、これだけの能力を手にしてしまったような気がしてなりません。もしこの人が、何らかの音楽的手ほどきを受けていれば、きっと作曲賞だって取れちゃうじゃないだろうかと思います。だいたい、デビュー作の「オルガニスト」では、バッハやオルガンに関する薀蓄がふんだんに語られますし。
本人はきっとそうは思わないだろうけど、この人は天才の部類に入る人なのだと私は感じます。
だから、ストーリーそのものの興味より、この作家、山之口洋氏のつむぐ文章、世界観、小説作法に興味を感じて読み始めたのがこの本。すごい、やな読者ですね・・・
というわけで、そんな山之口氏が書いたこの小説、面白くないわけがありません。
中篇だけど、落としどころがうまい。題材のネタにも本当に隙がない。いや、逆に言うと、この隙のなさが、この作家を大衆的にしない一因なんだなとも思ったり。技術的にむちゃくちゃな設定は、技術者としてやはり絶対書けないのだと推察します。だからこそ、理を通そうとして、技術設定には饒舌になってしまう。
ああ、それがまた、私の羨望を掻き立てます。創作家の才能の秘密を知りたい私は、そうやってどうでもいいことに日夜頭を悩ませているのです。
うーん、全然本の紹介してない・・・

2005年6月26日日曜日

バットマンビギンズ

渡辺謙が出演するということで話題の多かったバットマンビギンズ、見に行きました。なかなか面白かった。今回は、ビギンズということで、主人公ブルースウェインにどのようなことが起きて、バットマンが誕生したのかが語られます。中盤、バットマンのいろいろな武器や、例のスーパーカー(バットモービル)が作られる由来が出てきて、とんでもない話ではあるけど、そうやってバットマンが段々作られていく過程が面白かったりするわけです。
ただ私にとって、バットマンと言えばやはりティム・バートンなのですが、当然ながら、今回の映画はティム・バートンものとはかなり違います。今回はどちらかと言うとスパイダーマンに近いテイスト。ティム・バートンはもっともっと、おとぎの国の話にしちゃうんです。悪役もピエロのような哀しさを持っています。ゴッサムシティなんかも全然雰囲気違いますね。今回の場合、超近代都市にアジア的スラム街がドッキングしたような街になってました。非常にリアルな設定で、ティム・バートンが持っていたファンタジー要素、寓話的要素がほとんど無くなりました。まあ、監督が変われば、同じようにやって欲しいなどとは思わないので、それはそれでいいんですが、それでも、私的にはバートンのバットマンのほうがやはり好きですね。
それでも、全体的には小ネタも利いているし、ちょっぴりシリアスな雰囲気を持ちつつ、カーチェイス含む派手なアクションシーン満載の今回のバットマン、面白い映画だと思いました。

2005年6月19日日曜日

四日間の奇蹟

去年、原作を読んで感動したので、映画のほうも見に行ってしまいました。
やっぱり、原作の力は偉大です。映画はほぼ原作に忠実に作られていて、例え映画化されても原作の持つ素晴らしさがきちんと伝わってくることに驚きました。映画化されてすごくつまらなくなっていたらどうしよう、と思ったんですがね。やはり、この小説はスゴイと思いました。
逆に言えば、この映画化、あまりに原作に忠実過ぎるかもしれません。原作を知っている人が見ると、思い出して結構泣けるのだけど、読んでない人にはどう感じるのか心配です。かなり静かで穏やかな雰囲気で淡々と物語が進行するので(そのやり方はいいと思う)、ストーリーを単に消化しているようにも感じてしまいます。(まあ、それでも泣けるのだから原作の力が偉大)
もう一つ、賛否両論ありそうなのが、人格が乗り移った後、何度か千織役が真理子として表現するところです。見た目は千織なのに、中身は真理子、という状況を説明するために、本当に真理子役を使ってしまうのはいささか危険かもしれません。監督としては、かといって、映像エフェクトで薄く真理子を重ねるとか、そういうのがいやだったのでしょう。確かに、それだと逆に安っぽくなるかもしれません。そう考えると、これが最善とも思えるけど、難しいところです・・・
そんなわけで映画も泣けます。セカチューなど間違っても見に行きませんが、こういうファンタジーは大好きです。

2005年6月13日月曜日

堪能!ナマ上原ひろみ

今日は、浜松合唱団の演奏会を振り切って(^^;、となり(アクト大ホール)で開催されていたヤマハジャズフェスティバルを見に行きました。
浜松ジャズウィークと称して、毎年この時期に開催される催しなのですが、実は今まで一度も見に行ったことがありませんでした。今年は、あの上原ひろみが出演するということで、チケット発売当日に券をゲットしたのです。さすがに今回は、あっという間にチケットが売れたそうです。一ヶ月以上前から完売となっていたように思います。
今日の演奏会は、最初が上原ひろみ、2ステが金子晴美、3ステがエリック宮城率いるビッグバンド、という構成。はっきり言いましょう。上原ひろみのステージが一番良かった!!
もう見に行ったかいがありました。久しぶりにいい演奏会に出会った気分。もう、ミーハーと言われてもいいです。上原ひろみ、スゴイ。ライブを見てさらにファンになりました。
もうライブパフォーマンスが、完全に独自の世界を作っているんです。ちょっとプログレ気味な曲も大好きだし、演奏はワイルドで、ノリノリ。身体全体から音楽が溢れているという感じ。ピアノ弾いていても、足を上下に大きく揺らしリズムを取ったり、弾いているうちにテンションが上がって、腰が浮いてきて、ついに立ち上がるほどの状態になったり。嫌味でなく、本当に自然にそういったアクションが出てくるんです。演奏もメリハリが付いていて、切れの良さが心地よく、もうホール全体を自分の世界で満たしていました。
今回は凱旋公演ということで、浜松出身の上原ひろみ自身も、思い入れが強かったのではないでしょうか。故郷を想って書いたというピアノソロの曲も、情感がとてもこもっていたように思います。
私にとって、他の2ステージは完全におまけでした。50分ほどだけど、上原ひろみのライブをナマで聞けてそれだけで大満足です。

2005年6月10日金曜日

愛知万博に行ってきた

昨日、有休取って、愛知万博に行ってきました。浜松からだと車で1時間半ほど。そんな遠くはないけど、車で朝7時頃出発、帰ってきたのが夜11時で、メチャクチャ疲れた…
ひねくれ屋の私としては、企業パビリオンより、外国館を楽しもうと思っていたのだけど、外国のパビリオンって、どれも、エンターテインメントと展示のバランスが中途半端で、正直いまいちだった。これなら、もう展示中心というのもありかと思ったのだけど、いまどき音と映像、ライティングや現代美術、前衛オブジェ、のようなものじゃないといけない、と思っているのでしょうか。私的にはどうも外している気がしましたね。
個人的に良かったのは、マンモスの前に見るソニーの超横長画面、後は頑張って90分ならんだトヨタのパビリオン(というか、その他はほとんど見てないんですが)。トヨタは人気があるだけあって、やはり良かったですね。技術者的には、あのロボットや車の動きがどこまで仕込みで、どこまでリアルタイム制御なのかとても気になります。完全に仕込みだけではあの動きは無理なはず。ということは、各ロボットや車はそれなりの自律した制御システムを持っているような気がします。
それから、仕事柄、楽器演奏ロボットも気になりますね。あのラッパを吹く口はどんな仕組みになっているんでしょう。人間の唇みたいだったら気持ち悪いかも。トロンボーンはスライドじゃなくて、バルブが改造して付けられていたんですね。さすがにスライドは難しいのか。上から吊り下げられた女性ダンサーにも、思わず目が釘付けになりました。

2005年6月8日水曜日

プレ王に新曲登録

プレ王こと、プレイヤーズ王国にアカペラ多重録音作品の第二弾をアップしました。今回は「五木の子守唄」です。どうしても聴きたいという方は、Unit1317のページまでどうぞ。
しかし、今回は(も)かなり下手です。自分の声を聞いていると耳を覆いたくなります。いや、多分これを聞いた人も苦笑するに違いありません。まあ、よくこんなものを人様に聞かせるもんだなあと・・・
本当に、リアルグループやトライトーンの歌のうまさが身に染みてわかります。彼らは完璧なリズム感とハーモニー感のみならず、音楽の中にグルーブ感があり、さらにそれらがきちんと歌になっているんですよね。いやもう、ただただ脱帽です。歌の下手さは、どんな録音技術でもカバーできないんです。
そこまで言うなら、公開しなきゃいいのに、と言われると言葉もありません。素人がアカペラ録音するとこうなるという見本だと思って笑ってやってください。

2005年6月5日日曜日

In The Middle Of Life/The Real Group

TheRealリアルグループの最新アルバムにして、日本デビュー版になるCDを聴きました。リアルグループは知る人ぞ知る、有名なスウェーデンのアカペラバンド。今年で結成20周年だそうです。このCDの解説の中に、メンバーの自己紹介が載っていたのですが、彼らは1962-3年生まれなんですね。随分昔からいたから、結構な歳なのかなと思ったら、自分よりちょっと年上なだけじゃないですか。(-_-;;
さて、このCDですが、さすがリアルグループと唸らされる演奏の数々。歌のうまさ、ハーモニーの確かさは格別です。お気に入りな曲もいくつか見つかりました。曲のバリエーションも多く、楽しんで聞ける一枚です。
ただ今回は、このアルバムで気になったことを少し書いてみたいのです。
一聴して気になるのは、打ち込みの多用と、バンドの音の模倣への傾斜です。数曲聴いたとき、今回はついに本物のバンドを入れてしまったかと思いましたよ。どうやらそういうわけではなさそうですが、曲によっては明らかにサンプリング&打ち込みによって作られている部分があります。私としては、アカペラバンドのくせに、生で歌わないで、そういうやり方をするのは気に入らない、と言いたいわけじゃないのです。むしろ、録音技術の力に頼るのは、ちゃんとポイントが絞ってあれば構わないと思っています。
ただ、その結果、彼らが作りたいサウンドが、通常のバンドが奏でる音を声で模倣することを指向しているように思えてならないのです。つまり、ベース+ドラムのリズム隊、キーボードやギターなどのハーモニー系、メロディ、といった役割分担があまりにはっきりとしすぎたアレンジなのです。
これは、諸刃の刃だと思います。アカペラのようなマイナーな世界からポップ界での成功を狙おうとして、ポップ調にしたい気持ちはわかります。だけどアカペラだから良かったところまでスポイルしてしまってはもったいないし、これなら別にアカペラじゃなくていいじゃん、と言われかねません。
アカペラならではの書法というのはあります。全員が歌えるのだから、一曲を通して一人がリードボーカルである必要はないし、場合によってはもっとポリフォニックな処理をしたって面白いでしょう。ヴォカリーズのバリエーションだっていろいろあるはず。そう考えると、初期の方が音楽的にはアグレッシブだった感じがします(いやそんなに詳しくないですが)。
ちなみに、ジャケットの裏に "The voice is the only instrument used on this album." なんて書いてあるんですね。いくつか信じがたい音もあるのだけど、恐らくいろいろな技(エフェクトなど)を使ってサンプラーへの録音をしたのだと推察します。 だけどこのリズムの音は、やりすぎなのでは・・・

2005年6月1日水曜日

字幕をつけたらどうだろう

先日、某演奏会を聴きに行って、ふと思ったのです。
合唱のコンサートこそ、字幕があったらいいんじゃないでしょうか。
ポリフォニーなら歌詞を聞き取ることはまず不可能だし、そうでなくても外国語の歌詞を聞いて意味まで理解できるなんて通常の合唱コンサートではあり得ないと思われます。もちろん、そのために歌詞対訳をプログラムに入れたりするわけですが、演奏中は暗くなって読めないし、事前にしっかり読んでいる人もそう多くはないはず。
もし、演奏中に何らかの形で舞台上のどこかに字幕で歌詞を表示したら、視線もそのままで済み、多くの人がそれを見るのではないでしょうか。曲の進行と歌詞表示をリンクさせれば、曲が詩の内容を表現しようとしていることをより直接的に観客に伝えることが出来るはず。せっかく、詩の意味を考えて練習してきたのだから、その成果をきっちり聞いてもらいたいものです。
何度か言っていますが、観客の立場で演奏のことを考えることはとても重要です。そのためには、観客が自分たちの演奏をより理解してくれる方法を考える必要があると思います。少なくとも、団員にチケットを買わされた一般の人々にとっては、外国の合唱曲なんてほとんど聴いたことがないような曲ばかりなはず。であれば、プログラムの説明だけでなく、もっと積極的に観客にアピールする方法を探しても良いと思うのです。
最近だと、プロジェクタとスクリーンのセットも割と一般化しているのではないでしょうか。自前で買うのは大変ですが、借りるくらいなら何とかなるかも。後は、パワポかなんかで歌詞表示をPCで作って、本番は誰かにオペレータをやってもらう、というのはどうでしょう。やっぱり、ちょっと大掛かりかな・・・