ちょっと前に、こんな話を書いて、聴衆不在の合唱界を活性化するために、合唱のイメージを変えるようなスーパープロ合唱団が出来たら・・・なんて書きました。もちろん、具体的なイメージがあるわけでもありません。それでも、電子バイオリンを持ってステージ上を動き回るセクシー弦楽四重奏団や、中国の民俗楽器を演奏する12人の女性バンドとかがマスコミの注目を集める時代なのですから、アイデア次第でなんかできそうな気がしてきませんか。そんなわけで、たまにはちょっと妄想系に入ってみましょう。
といいながら、いきなり別話題ですいませんが、先週テレビで、「鼓童meets玉三郎」をという番組をやっていて、これに私は非常に感銘を受けたのです。(また再放送されるようなので、気になる方はお見逃しなく。鼓童のHPはこちら)
鼓童はいわずと知れた和太鼓の演奏集団。実は私、まだ一度もコンサートに行ったことはないのですが、この番組を見て、今度は絶対に行きたいと心に誓ったのでした。
彼らの本拠地は佐渡島です。一年の1/3を佐渡で、1/3を国内ツアーで、1/3を海外ツアーで過ごしているそうです。プロといっても都会でない場所に本拠地を置き、そこでひたすら練習を重ねるような、そういうプロ団体というのはクラシックの世界では聞いたことがありません。もちろん、日本の伝統的な音楽を中心にすえ演奏活動するわけで、その意識を保つためにも都会でなんか暮らしちゃいけないのかもしれません。でも、音楽演奏に対するそういった精神的な態度は、全く恐るべきものです。
このテレビ番組の中でも、そういった彼らの音楽への真摯な態度を感じることが出来ました。
自分たちだけで作ってきた今までの音楽がマンネリ化していないか、それに疑問を抱き、玉三郎を演出家として招きます。最初は、私も玉三郎なんて音楽家じゃないし、なんか眉唾だなあと思っていました。しかも、なんで女形の人ってカマっぽい話し方になっちゃうのかな、なんてことを考えながらぼんやりテレビを見ていたのですが、なんだか段々面白くなってきます。よくよく聞いていると、玉三郎の言うことは、やっぱりなかなか奥が深いのです。芸術全体の普遍的な考え方みたいなものをしっかり捉えていて、鼓童のメンバーとやりあいながらも一つずつ音楽を仕上げていく様子に、だんだん惹きこまれていきました。
それに、玉三郎ってなかなか音楽の素養も高そうです。古典芸能全般に関して、一通りのことができちゃうんですね。それに気づいたとき、ようやく、なんで鼓童が玉三郎を呼んだのか、その理由が分かった気がしました。
印象的なシーンは、鼓童のメンバーの一人が、ある民謡を玉三郎に歌い聞かせたところです。本当に情感がこもっていて、聞いていた玉三郎も思わずホロリ。歌の本当の力を垣間見た気分でした。
鼓童のメンバ、実は歌もステージでかなり歌います。もちろん民謡に根ざした旋律なんですが、合唱で中途半端に民謡を歌っている私たちが本当に恥ずかしくなるくらい、日本の叙情世界にどっぷり浸かった彼らの歌声は聞くものの心を揺さぶるものです。
��鼓童は伝統音楽に関するワークショップなどもやっていて、その中で「ヴォイス・サークル」なんてのもあるようです。ちょっと興味あり)
もはや世界的に成功を収め十分なネームバリューもある鼓童のように、しっかりした芸術的目的意識を持ち、独自の音楽を作り続けるようなそういったプロ合唱団というのは出来ないものでしょうか。
合唱団というわけではないけど、歌関係でちょっと気になるのはイギリスのADIEMUSというグループ(というか、カール・ジェンキンスによるプロジェクト的団体らしい)。このバンドも、ちょっとエスニックな不思議な「歌」の世界を追求している面白い音楽を作り続けています。
まだまだ、歌でも、新しい表現方法でありながら人々の心を打つ、そういった個性ある音楽を作ることは可能だと私は信じています。
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