2004年12月7日火曜日

太陽の塔/森見登美彦

第十五回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦の「太陽の塔」を読みました。
いやー笑った、笑った。面白かったです。
言ってしまえば、もてない男たちが、世の恋愛至上主義を嘆きながらも、やはり心の底ではささやかな幸せを求めて止まない心情みたいなものが垣間見える、とっても恥ずかしい大学生のお話。そう、青春というのはとめどもなく恥ずかしいものなのだと思うのです。誰にもいえない恥ずかしい体験を、赤裸々に書くこと、ただし直球でなくて、相当な変化球で、これがこの小説の目論見でしょう。
だから、とても共感できてしまう。全てがあまりに恥ずかしいからです。もちろん、笑いを追及するあまりあり得ないような話も出てきますが、そこに横たわる恥ずかしい感情は、誰にでも経験のあるものです。
そういったわけで、この小説、エンターテインメントというよりは、むしろ純文学に属する小説だと私には思えます。この小説にはストーリーなどほとんどなく、ストーリーに無関係な妄想がむくむくと行数を侵食しているからです。
それでもラストシーンはバカバカしくも幻想的で、情景が思い浮かぶような、不思議な面白さを感じました。泣きながら笑いながら、この部分読みました。このあたり、実は結構技巧的に書かれてもいるとも思えました。


0 件のコメント:

コメントを投稿