2013年12月7日土曜日

秘密を保護するのって難しい

もちろん、今回の話題は夕べ国会で成立した某法律に触発されて書いているわけですが、私自身はこの法案に対して政治的に特に賛成とか反対とか言いたいわけではありません。従って,以下は政治的な主張とは全く違う次元で書かれていることをご承知おき下さい。


私には、現実問題、秘密を保護するのってとても難しいよな・・・という気がするのです。
例えば、子供の頃「誰か好きな人いる?」とか聞かれるときどう答えますか。もちろん、聞く側は私が誰を好きか具体的な人の名前を知りたいわけです。
1.好きな人の名前を教えてあげる。
2.「好きな人はいるけど教えない」と言う。
3.「好きな人はいない」と言う。
4.ひたすらはぐらかす。
まあ、反応としてはこんな感じでしょうか。
もし自分に好きな人がいるならば(そしてほとんどの人はいるに決まってる)、3の答えは明らかに嘘です。
しかし、3で答えた場合、それが嘘かどうか確かめる術も無く、尋ねる側もこれ以上面白い回答が得られないと断念するのでそれ以上この話題には触れなくなるでしょう。

それに対して、答えた側は嘘をついたことで自分の良心に負荷がかかります。
この程度の話題なら、まあそこそこに嘘を付くこともあるでしょうし、人はそういう嘘のつき方を覚えながら、みんな大人になっていくものですが、逆に大人になるほど面倒な秘密も増えていきます。


例えば、私のようにメーカーに勤めていると、社外の人からこういうことを尋ねられることがあります。
「○○の新製品っていつ出るんですか?」
これに対する答えはいくつか考えられます。
1.いついつに何々が出ますよ、と教える。
2.今開発してるけど、いつどんなのが出るかは言えない、という。
3.開発していない、という。
4.それは秘密、という。
5.ひたすらはぐらかす。
1は企業秘密そのままバラすのでヤバいです。2も新商品を作っていることを言ってしまっているので、ある程度の情報が漏れているとも言えます。3は上で言ったような嘘であり、数ヶ月後に実際に商品が出るとそれが嘘であることが明確になってしまいます。
4.は正しいけれど、むちゃくちゃ勘ぐられます。「あー、やっぱり作ってるんだ」みたいな反応をする人もいるでしょう。たいていの場合、人は「秘密」と言われるともっと知りたくなるし、一度知りたくなる気持ちに火が付くと、逆にあらゆる手で探ろうとするかもしれません。今のIT時代にはそれは十分恐れるべきことです。


そんなわけで、もし相手が知りたいことが、こちらの秘密にしたいことだった場合、秘密が無いようにみせかけ、嘘もつかずにスルーすることは論理的に大変難しいことではないかと思うわけです。

たいていの場合、最初の例のように嘘をつくわけでしょうが、それはその時の常識で正しい判断だったとしても、数十年後の常識で正しいことなのかは誰にも分からないし、下手をすれば数十年後の常識で糾弾されかねない怖さもあります。

当然のごとく、国家や組織の利益を損ねないようにするためには、ある種の情報は秘密でなければいけません。
しかし、秘密を守るためには、何が秘密か定義しなければならず、もしその定義が揺れ動くようなら、守るためについた嘘が今度は犯罪になる可能性もある、という気がして、こういったルールの運用は大変難しいのではないかと個人的には感じてしまうのです。


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