なかなか読書が進まず、読むのに3ヶ月ほどかかってしまいました。
しかし、これは非常に示唆に富む面白い本でした。それはきっと自分が典型的な内向型人間だという自覚があるからでしょう。
著者はアメリカ人。
当然ながらアメリカでは、外交的で明るく、社交的で、言葉遣いが巧みで、人と話をすることが大好きな、エネルギー溢れる人間が社会的には高く評価されるわけです。
しかし、内向型人間は大勢の人と話すと疲れ、一人になって何かに没頭することを好み、広く浅い付き合いより狭く深い付き合いを好みます。こういった人々は、一般的には社会的に表に出るようなタイプにはならないわけですが、本書では内向的な人間でも立派な仕事をした人々の例を挙げ、また内向的ゆえのメリットを生かすことによって、これからは内向型人間でも大きく活躍し得るということを主張します。
著者自身も内向型人間であることを、まずカミングアウトします。その上で展開される論考は著者自身の感情を強く反映しており、それだけに共感するところが大変多いのです。
序章で、内向型人間の特徴を20項目挙げています。
1.グループよりも一対一の会話を好む。
2.文章の方が自分を表現しやすいことが多い。
3.ひとりでいる時間を楽しめる。
4.周りの人に比べて、他人の財産や名声や地位にそれほど興味が無いようだ。
5.内容のない世話話は好きではないが、関心のある話題について深く話し合うのは好きだ。
6.聞き上手だと言われる。
7.大きなリスクは冒さない。
8.邪魔されずに「没頭できる」仕事が好きだ。
9.誕生日はごく親しい友人ひとりか二人で、あるいは家族内だけで祝いたい。
10.「物静かだ」「落ち着いている」と言われる。
11.仕事や作品が完成するまで、他人に見せたり意見を求めたりしない。
12.他人と衝突するのは嫌いだ。
13.独力での作業が最大限に実力を発揮する。
14.考えてから話す傾向がある。
15.外出して活動した後は、たとえそれが楽しい体験であっても、消耗したと感じる。
16.かかってきた電話をボイスメールに回すことがある。
17.もしどちらかを選べと言うなら、忙し過ぎる週末よりなにもすることがない週末を選ぶ。
18.一度に複数のことをするのは楽しめない。
19.集中するのは簡単だ。
20.授業を受けるとき、セミナーよりも講義形式が好きだ。
正直、私も全て当てはまるわけでは無いけれど、ここで著者が内向的だと考えている人たちのイメージは伝わることと思います。
本書の中盤、こどもに対する心理的実験が紹介されます。
それによると、刺激に対して高反応な子供は成長するにしたがい内向的人間になっていき、低反応な子供は外交的になるそうです。
これは非常に示唆に富んだ話です。つまり、内向的人間とは、基本的に非常にセンシティブな人間であり、世の中の多くの刺激から自分の身を守るために刺激から遠ざかるような行動を取るようになるというわけです。
そう考えると、芸術家のような人々が多く内向的であるのも頷けます。彼らは刺激に対してセンシティブであるが故に、それが芸術を生む原動力にもなり得るわけです。
人はどうしたって、持って生まれた性向、性格から逃れることができません。
内向的人間は、人生において、内向であるが故に辛酸を舐めるような経験も多いでしょう。渾身の意見、作品を否定されたり、自分と同じ立場にいても世渡り上手な人が評価されたり、ときには自分の意見も本質とはかけ離れた枝葉末節な理由で否定されたりします。
そういう経験から、自分の外向性を多少なりとも磨く必要はあるのでしょうが、世の中にも多くの内向型人間がいて、同じような経験をしながらも多くの場所で活躍していることは、私に勇気を与えてくれます。
時代はますます専門性が問われ、アート感覚が問われるようになるでしょう。
これからは、センシティブな内向型人間が活躍できる場が益々増えていくでしょう。そんな希望溢れる未来を感じることが出来た良書でした。
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