2011年5月6日金曜日

プリンセス・トヨトミ/万城目学

以前テレビで観た「鹿男」が面白かったり、テレビで作家インタビューとかで見た覚えがあって気になっていた作家、万城目学の作品。帯に映画化と書いてあったので、久しぶりにエンタメ系の小説をGWに読んでみようと思い購入。

基本的に好きです。荒唐無稽だけど、妙に雑学が詰め込まれているペダンティックなところ、しかもやけにディテールに凝っているし、それでいてクスッと笑わせたりほろりと泣かせるところがしっかりあるというサービス性。作家として十分な貫禄ありという感じです。
「大阪全停止」というキャッチコピーが書かれていますが、正直これだけで興味をそそられるとちょっとそらされる感じかも。そういう意味ではややミスリード気味なコピーな気がします。
ただ、実際にたくさんの人が住んでいる大阪の人たちには、誰にも言わない秘密があるなんていうのは、なかなか面白い設定。それがどこかの架空の都市とかでなくて、大阪って言うのが妙にリアル。ただ、その設定を先に考えついたせいか、それを成り立たせるための細かな設定にやや無理があったような気がします。ネタバレになっちゃいけないので、これ以上は書きませんが。

この本の中で際立って個性的なキャラは旭ゲーンズブールという、長身で美人で超エリートのハーフ女性。この人の容姿を想像しながらこの本を読んでいくっていうのが本書の楽しみの一つですし、物語の最初から最後まで重要な役回りを演じます。
映画化って、この役、誰がやるんだろーとか思って、帯の写真に綾瀬はるかの写真があるけど全然イメージ違うよなと考えていたら、なんと映画化では性別が変えられている模様。えー、男? この作品の魅力が半減したような残念さ。
じゃあ、綾瀬はるかは誰役?というと、中年のドジな男役。ここも性別を変えられているわけです。
まあ、視覚的には分からないでも無いし、長身でハーフ美人でこの映画を成り立たせられる女優って確かに思い付かない。それだったら、こういうキャストにしようってのも分かるんですが・・・

全体的にはこういったストーリーなら、もう少し内容をそぎ落として短めな小説にしたほうが良いとも思いました。これだけの長編だと、あまり複雑な伏線を持たせずに、もっとストーリーに起伏を持たせたほうが読みやすいでしょうね。
大阪を舞台にしたファンタジーですが、これと対峙するチームとして会計検査院という組織を選んだところはなかなか秀逸でした。実在しながら、よく立ち位置がわからないこういった組織を表舞台に上げるというセンスは素晴らしいと感じました。
この著者の奇想天外な発想にはこれからも期待したいと思います。

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