合唱を始めた高校時代以来、混声合唱中心の活動をしていました。一時期、某職場合唱団で男声合唱もしたおかげでそれなりに男声合唱にも深く付き合うことが出来ましたが、団も活動休止してしまい、今では男声を歌う機会はなかなかありません。
とはいえ、混声合唱をやっていると、ときどき男声合唱をやる機会があるものです。
当然、大は小を兼ねるということで、混声合唱団内では、女声だけ集まって女声合唱曲を歌ったり、男声だけ集まって男声合唱曲を歌うことが可能です。それを団の公式な練習として行うか、有志が別枠で練習するか、それぞれの団ごとに事情は異なるでしょうが、私がこれまで在籍していたどんな混声合唱団でもこういった機会がありました。
しかし自発的に集まるような場合、女性が集まって女声合唱曲を歌おう、となることより、男性が集まって男声をやろうというほうがその機会は多いように感じます。まあ、どうでもいいことだけれど、面白い現象ですね。
恐らく女性と男性の性格的なノリの違いもあるんでしょうが、音楽的な理由もあるように思います。
その一つとして、少なくとも日本において男声合唱曲にはシンプルなアカペラ曲が多いということが挙げられます。というか、具体的に言えばカワイの「グリークラブアルバム」(通称赤本)の存在が大きい。取りあえず男声で何かやるならこの楽譜、みたいな存在です。
こういった楽譜集が合唱団の部室に常設され、ちょっとした折に数人で歌ってみたりといった、そんな風景は全国の合唱団で見られるのではないでしょうか。私の経験だけが特殊ではないはず。
この赤本の曲が全て無伴奏だったということがまた重要ですね。ピアノが必要なら、ピアノを弾く人とそういう場所が無いと練習できません。無伴奏だったことで、混声内であっても数人が乗り気になるだけで歌うことが出来たというのは大きいです。
それから昔から言われているように、物理的に男声合唱はハモりやすく、歌っていて気持ちがいい、という事実があると思います。
女声合唱に比べれば音域が広いし、ハモったときに強調される倍音がちょうど良い周波数帯域にあるのです。同じレベルの技倆なら、明らかに女声より男声のほうが合唱としての美しさが際立ちます。それはハモりに敏感な合唱団員である当人が最も良く感じられるはずです。
ところが、女声合唱団と男声合唱団、日本ではどちらが多いかというと圧倒的に女声合唱団なのです。上の話と合わせると面白い話ですね。混声合唱団内では、自発的に楽しみで歌うのは男声合唱曲が多いのに、世の中では女声合唱団のほうが多い。
これについては、合唱曲の特性と全然違うレベルの理由であるのは何となく想像できますが、ここで具体的に考えるのは止めておきましょう。日本社会の分析論になってしまうので。
いずれにしろ、数の少ない男声合唱団は、団体数が少ないからこそ、本当に好きな人間が集まっており、その合唱オタクレベルはかなり高くなります。
これがまた、オタクの居心地を良くし、不思議な団結力を醸し出しているように思います。人間関係の愛憎で指揮者が苦労する女声合唱団とは大違い。
そういう合唱団を経験すると、団の雰囲気と男声合唱曲の魅力が渾然一体となり、ますます男声合唱は素晴らしいという結論になっていくわけですね。
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