演奏会のプロジェクタの投影などの演出ネタ。もう少し考えてみましょう。
映像や照明を音楽に合わせる、という感じで演出してみようと思うと、だんだんシステムが大がかりになります。こういう状況を一言で言うと、演出が音楽と同期する、ということ。この同期システムをどう作るか、を考える必要があります。
まあ、考えるまでもなく、映像担当者と照明担当者が楽譜を見ながら操作するしかないじゃん、と思うかもしれません。いわば人力同期システムです。
今回、我々が演奏会でやった曲進行に合わせた紙芝居も、人力同期システムでした。
舞台で展開されている音楽を同期のマスターと考えれば、その他のものがそれに従属するしかありません。結果的に、それは人力で楽譜を見ながら機器を操作するということになります。
しかし、実際のショービジネスの現場では、曲に合わせた派手な照明・映像の変化は日常茶飯事。これは、担当者が音楽を聴きながら操作しているのでしょうか。
今のポピュラー系コンサートでそういった演出をする場合、恐らくほとんど音楽が同期のマスターになっていないと思います。
つまり、同期クロックは演奏とは別のところから出ていて、舞台上の演奏はそのクロックに合わせて演奏するのです。今どきのドラマーは、ほとんどイヤホンで「ピッピッピッピッ」というクリック音を聞きながら叩けなければ商売出来ません。
オーケストラでも、一昔前の映画音楽は、指揮者が映像を見ながら指揮をしていたそうです。一昔前、といっているのは、今ではオーケストラサウンドも生演奏ではなくコンピュータ上で作れてしまうからです。
もっともポピュラー音楽はほとんどの場合、BPMが一定で、アゴーギグの変化がありませんから、クロックに従って音楽が進行しても、音楽の質にそれほど影響しません。
テンポ感やアゴーギグが重要な音楽性の一つとなるクラシック系音楽では、なかなか同期のマスターが音楽以外にあるという状況を受け容れるのは難しいかもしれません。
それでも、私はそういうやり方ってあり得ないかなと夢想してしまいます。
アゴーギグがある場合そういうテンポの変化も含めて、全て事前に固定してしまいます。指揮者はクリック音を聞きながら指揮し、何度演奏しても同じ時間で演奏できるように指揮者も演奏家も練習します。(それを音楽的でない、と感じないことにするしかありません)
その上で、同期クロックに合わせて、映像機器や照明機器に指示を出すようなシステムを組みます。やろうと思えばプログラムを書いて、人が操作しなくても自動に動作するシステムを作ることは可能でしょう。
恐らく、ショービジネスの世界ではそういったシステムが、技術的にすでに出来上がっているものと想像します。
椎名林檎の08年の「林檎博」のDVDを見ると、オーケストラと指揮者がいるのに、音楽と演出と打ち込みが完全に同期しているのが見て取れます。どう考えても、指揮者がクロックを聴きながら振っています。
もちろん、生演奏は会場の残響やら、人の入りやら、いろんな要素に影響されるから面白いという側面もありますが、やや次元が低いと思われても、少々派手な演出のために音楽の時間軸を固定してしまうというのは個人的にはアリだし、いつかやってみたいという気持ちも持っています。
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