ウチの合唱団(ヴォア・ヴェール)向けの解説記事として書いております。
ただいま練習中のスヴィデル/Cantus gloriosusの楽曲構造のアナリーゼのようなものをご紹介します。楽譜が無いと、以下の内容はちょっとわからないかと思います。悪しからず。
これまでこの曲を歌っていて、妙にパターン化されている楽曲構造に、何かあるんじゃないかと感じていた人もいたかもしれません。
全体を区切って、一つ一つのセクションを吟味してみると、確かに非常に面白いこの曲の楽曲構造が見えてきました。曲自体は全体で3部形式なのはすぐわかります。これを、提示部→中間部→再現部、というように称してみます。
この曲の面白いことは、提示部と再現部が構造的にシンメトリな形になっているということです。
この様子を図に表してみました。
AとCoda(A''')が対応、BとB'が対応、CとC'が対応、そしてA'とA''が対応します。つまり中間部(D)を中心に、提示部と再現部が時間方向に鏡像関係(シンメトリ)にあるわけです。
特にそれを象徴しているのが、CとC'の関係です。
Cでは、同じフレーズが3回繰り返されながらディナーミクがff→f→mfとだんだん小さくなります。逆にC'では、同じく3回繰り返されながらだんだん大きくなります。面白いのは、CとA'の接続部が移動ドで「ソミレド〜」と歌われるのに対して、A''とC'の接続部に「ドミファソ」という音形が現れる点。明らかにこれは反行形であり、作曲者がシンメトリを強く意識していることの現れのように感じます。
ただし、冒頭のAと最後のCoda部はディナーミクや音楽の質感は異なります。曲構造がシンメトリであることは、作曲者にとって厳格に適用するような最優先事項ではなく、曲の味付けのために使っていると考えるべきでしょう。
従って演奏に際しては、このシンメトリ感をより強調するような音楽作りをすべきだと考えます。
例えば、A''の開始部には音量指定がありませんが、私の演奏ではここをppとします。もちろん、A'と同じにするということです。
また、特にCとC'のディナーミクが正反対になることを意識して歌いましょう。
スヴィデルという人はこのような構造的な作曲をする、ということがわかってくると、演奏にもそれなりの端正さ、理知的なアプローチが必要になってきますね。
ちなみにYouTubeにこの曲の動画があります。
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