2009年12月2日水曜日

ヘヴン/川上未映子

Heaven広告とか見て気になっていて、ついつい本屋で見つけたときに買ってしまいました。
帯に書いてある文句とか、雰囲気から察していた内容と、正直かなり違っていて、とんでもない本を読んでしまった、というのが率直な感想。
同じクラスでイジメられている主人公とコジマという二人が手紙で交流を始め、その仲が発展してゆき・・・というところまで読んでいると、ほんわりした感じで二人の交流が進んで、心が通い合った二人に悲劇的な結末が・・・みたいな感じで話が進むと思われたのです。

しかしその想像は二重にも三重にも裏切られます。
そもそも、コジマはコジマでとても狂信的な思想で満ちていて、それを「僕」にも求めるのです。それがかなわないとき、コジマは「僕」を見限ってしまいます。彼女が目指しているのは、(イジメに耐えることを人生の目的とする)とてつもなく求道的な生き方でした。
それから「僕」はなんと、いじめっ子の一人百瀬と対峙し、自分への仕打ちを糾弾します。しかし、百瀬は実に饒舌に、そしてロジカルにイジメ側の論理を語るのです。「この世に意味なんてない」とか「みんなは決定的に違う世界に生きている」とか、恐ろしくシニカルで厭世的な哲学。
中学生とは思えないような、思想的、哲学的な会話。しかしそれでいて、リアルで凄惨なイジメの現場。直視できない痛ましさ。こういう事柄を平然と並べ、そしてストーリはエンタメ的な大団円を決して迎えません。

しかし、ラスト数行は感動的な言葉で締めくくられます。密度の濃い、畳み掛けるような文体は、読者に対して暴力的な感動を強要するのです。
痛々しくて、怖くて、忘れがたい印象を刻み付ける小説です。そういうのが嫌な人は読まないほうが良いかもしれません。

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