アカペラスクエアのCDが出来てきて、各団の演奏を聴いています。
自分たちの演奏の傷が痛々しいのは置いておいて、HCCの歌ったウィテカーの"With a Lily in Your Hand"ってかっこいいなあと改めて思った次第。
近年出てきた作曲家の中で、ウィテカーは非常に質の高いコンテンポラリーな曲を書ける人だと私は評価しています。アップテンポ&変拍子とその和声感など、細かく見てみるとそれほど複雑な音でも無いのに、トータルとしての楽想の面白さが非常に斬新に感じます。こういうところが真の能力の高さを感じさせるのです。
甘すぎず、抽象化されたメロディなども才能を感じさせるし、ルネサンス的な音画的発想が曲に仕込まれているのも歌い手にアカデミックな楽しみを与えます。("butterflies"とか、"universe"とか)
あとウィテカーに特徴的だと思われるのはテンション音の使い方。
冒頭の2小節目の"Love" の和音。B-D#-E-F#-B-F# となりますが、つまり B の三和音に E が付いています。譜ヅラだと一見どう解釈していいか迷うのだけど、聴いてみるとこれが心地よい。
私の感じではドミナントの11th(sus4的とも言える)と3rdを同時に使っている、というように解釈しました。なんでドミソにファが付いてるの?と思うとちょっと奇異だけど、ドミナント的に使うなら音楽の流れの中で効果的に聴こえる場合もあるのでしょう。
当然今風の曲ですから、maj7th, 9th はかなり多用されるわけですが、上と同様 11th の扱いがやはり面白い。"universe"の宇宙的な広がりを感じさせる和音では、F#の和音に、6th,9th,+11thのテンション音が乗っかります。特に最高音のソプラノの+11thが神秘的な感じを出しています。
同様の音は、前の方にもあります。32,34小節のG#とか、35,36小節のD#の音とか。D#はテンション音というよりは、リディア旋法的と言った方がしっくりくるかもしれません。
そういった温故知新的な技法と、現代風アメリカ風な音使い、ウィテカーはそれらをうまく縫合して聴き易い音楽を作ることに非常に長けた作曲家ではないでしょうか。
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