テンペストを読み終わってから、池上永一の他の小説を読んでみようと思い、前作のこれも大作である「シャングリ・ラ」を読みました。
舞台は50年後の東京。温暖化の影響で熱帯化しつつある東京に作られ続ける空中積層都市「アトラス」。反政府ゲリラのリーダー國子を中心に、森林化政策を進める政府との戦いを描いた長編小説。ありていに言えば、SFですね。
一見重厚な内容かと思いきや、雰囲気はほとんどラノベ。テンペストもそうだけど、主人公はスーパー美少女。後半のドタバタはもはや何でもあり。どんだけやられても、なかなか死なないとか、もう死んだと思ってたのに助かってたりとか。まるで、小学生向けアニメ的な匂いを醸し出しています。それでも細かい描写に無駄に薀蓄が詰め込まれていたりするあたりが、ファンタジーノベル作家の面目躍如と言ったところでしょうか。
ちなみに、帯にも書いてありますが、2009年テレビアニメ化決定だそうです。どこまで子供向けにするか、微妙なところではあります。(國子の同士は、スタイル抜群のニューハーフという設定だし)
個性的なキャラを作って自由に、はちゃめちゃに遊ばしている、というような書かれ方なので、ストーリー展開そのものが技巧的というわけではありません。
それより、私はこの小説の世界観の設定に感心しました。経済は排出炭素ベースに変わり、そのマネーゲームの描写が執拗に描かれます。それを読んでいると最近のデイトレーダーの株取引を想起します。この設定を考えるだけで、筆者はかなりの経済マニアじゃないかと思ってしまいます。
それから、積層都市アトラスの発想も面白い。下から第一層、第二層・・・と都市が段重ねで作られた建造物。自重に耐えられるように、材料は全て炭素材で出来ているという設定。一つの層だけで数百メートルの高さがあり、上の層に行くとかなりの高度になるので温度は低くなります。物語ではまだ建設中という設定だけれど、最終的に十三層まで作られる予定。
こういった科学的、政治経済的、社会的設定のアイデアが面白くて、それだけでも一読の価値はあるかもしれません。来年、放映するアニメを見るかは定かではありませんが。
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