アカペラの魅力について、もうこれに尽きるというところから言ってしまうと、やはり人の声のハモリの美しさなのだと思います。
もちろん、美しいハーモニーを奏でるには、それ相応の努力と、センスと、そして結局のところ人材が必要なわけですが、そういう美しい演奏を聴いたときの感動は格別です。
私の経験で言えば、キングスシンガーズやアヴェソルやオスロ室内、そしてBCJなど、生で聴いたときの感動は本当に忘れられません。いくら美辞麗句で表現しようとしても、生演奏のあの響きを伝えることはできません。
そういったプロ級のレベルは別世界なんだと思ってはいけません。
声楽家を集めたからって、いい演奏になるとは限らないし、アマチュアの団体だってコンクールなどで時折、本当に美しいハーモニーを聴かせてくれることもあります。
めったに出会えない瞬間だからこそ、それを追い求めることが大変ではあるけれど何より尊いことのように思えます。
もちろん、ピアノ伴奏でも美しくハモることを目指すのは可能でしょう。
でも、そこで聴ける美しさの純度がどうしても私には違うように思えます。美しくハモった合唱の和音の上に、あえてピアノのコードを載せるのは野暮というもの。ピアノにはピアノにしか表現できないことがあると思うけれど、合唱の純度を強調するなら、やはり同時に楽器の音は鳴らしたくありません。
楽器の特性という問題もあるでしょう。純正律とか平均律とか音律の話をする人もいますが、それよりも、ピアノが減衰系の音色である、ということの方が問題な気がします。持続するハーモニーの美しさとは、どこか異質な音楽表現を目指す楽器であると私には感じられます。
こうやって考えると、まずはアカペラ曲はハーモニーが美しい必要があるし、その美しさを際立たせるような書法が必要ではないでしょうか。単純ではあっても、長めの音価とシンプルなハーモニーによる音符は、より美しい合唱に近づくと思います。
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